3.抵抗勢力と対峙する

DX推進体制を構築するには、周囲の抵抗勢力と向き合うことも大切です。

筆者も実際、プロジェクトが進み、周囲の理解も得られるようになった矢先、変革に反対する人が壁となって立ち塞がりました。

筆者はもともと、グループで育った人ではありません。外部から来た人、いわば「外様」です。そんな人がプロジェクトを推進するのを面白がらない人たちが「抵抗勢力」として立ち塞がったのです。こうした人の多くが筆者より年上で、役職も上の人たちばかりでした。

もし自分より若く、会社への在籍期間も短い人が新しいことを主導すると、前から会社にいる人はどう思うでしょうか。「自分たちの培ったものを壊す」。そう思ってしまうかもしれません。

鈴木康弘『成功=ヒト×DX デジタル初心者のためのDX企業再生の教科書』(プレジデント社)
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実際、筆者もこうした抵抗勢力には参りました。面と向かって意見を言われるわけではなく、表には出ない老練な手口で足を引っ張ってきたのです。「素晴らしい」と褒め称えながらも動こうとしないのは日常茶飯事。「鈴木は銀座で飲み歩いている。リーダー不適格だ」という怪文書も流されました(ちなみに筆者はお酒を飲まないので、飲み歩くことは不可能ですが)。

そこで当時の社長に相談し、懇切丁寧に対応いただきました。話をするうちに頭が整理され、悩みが次第に消えていったのです。

このとき感じたのは、コミュニケーションの大切さです。そこで私は、「毎週金曜日の朝8時から1時間、プロジェクトの進捗を報告させてください。そのとき、各事業会社の社長も同席いただけないでしょうか」と社長にお願いしました。すると社長は笑顔で快諾してくれたのです。

それから1年半、毎週欠かさずにプロジェクトの進捗を報告しました。その結果、抵抗勢力は次第におとなしくなっていったのです。

変革には抵抗はつきものです。ときにはポジションパワーを駆使し、抑えることも必要だと知りました。抵抗勢力に悩むときはポジションの高い人に協力を仰ぎ、その人の同意のもとで進めることも大切です。

苦労が大きいからこそ、成功したときの喜びが大きい

DX推進体制を構築するためには、さまざまな取り組みや配慮が欠かせません。中には「苦労ばかりでリーダーはやりたくない」と思う人もいるでしょう。確かにDX推進体制を構築してプロジェクトを進めるのは、人並み以上に苦労するかもしれません。

しかし、苦労を乗り越え成功に向かい出したときには、通常の仕事では得られない達成感ややりがいを感じられます。

筆者は現在、多くのデジタル推進体制の構築やプロジェクトの推進を支援していますが、どのプロジェクトも一筋縄ではいきません。苦労も当然のようにあります。

半面、プロジェクトが成功したときには、メンバーと喜びを分かち合うことができます。リーダーはもちろん、メンバーもとても良い表情をしています。筆者はその顔を見たい一心で、今もDXの支援を続けているのかもしれません。苦労の先にある「喜び」を求め、ぜひDXに取り組んでいただければ幸いです。

当記事は「DX MAGAZINE」(デジタルシフトウェーブ)からの転載記事です。

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