無料化は実は簡単、予算さえ確保すればできる
【ひろゆき】いずれにせよ、明石市では「5つの無料化」のような経済的支援だけじゃなくて、親が孤独を感じることなく、安心して子どもを育てられるような精神的支援の仕組みが整っているわけですね。子どもの世話は家族だけじゃなくて社会が見るものっていう考えが泉さんの根底にあって、明石市の子育て政策の成功の本当の理由は、そこにあるのかもしれません。
【泉】正直なところ、「無料化」を実施するのは極めて簡単なんです。予算をつけるだけで、新たな制度も人材も必要ないですから。むしろ養育費の立て替えや児童相談所の制度設計などのほうが、対応の丁寧さが求められたりリスクが伴うので、大変な作業です。ただやはり、そうした魂の込もったアプローチをしないことには、本当の子育て支援とは言えないと思っています。
「みんなのための政策だから」バリアフリー設備の導入を市が全額負担
【ひろゆき】子育て政策とは少し違いますが、明石市では、障害者支援にもかなり注力されていると聞きました。具体的にはどんなことをしているんですか?
【泉】まず、明石市が全国初の試みとして取り組んだことは、飲食店などへの筆談ボードや点字メニュー、簡易スロープの導入を、全額市が負担するというものです。日本では、ホテルには車椅子で入れるようなスロープが設置されていますが、飲食店にはまだまだ未設置のところが多いです。他の自治体では、この設置費を店側と折半することが多いんですけど、明石市では全額負担するのが特徴です。
【ひろゆき】障害者の人が暮らしやすいようにっていうのがベースにあるとして、お客さんが増えれば飲食店の利益が上がるから、結果的に税収に跳ね返ってくるっていうのも狙いだったりするんですか?
【泉】それもありますが、それ以上に、街がやさしくなるのはみんなのためという考えですね。スロープをつければ障害者の方も入りやすいし、お店の人も助かり、経済が回るから市も助かる。みんなのための政策だから、市が受け持つというスタンスです。
【ひろゆき】僕は今、パリに住んでいるんですが、車椅子の人をほとんど見かけないんですよ。石畳が多くて移動しづらいと思いますし、エレベーターのない地下鉄の駅も結構あったりするんで、パリは障害者の人にとっては住みづらい街なのかもしれません。そういう意味で言うと、日本は設備面において、かなり合理的配慮が行き届いた国のように感じます。