愛知県の喫茶店では、コーヒーを頼むとトーストやゆで卵が無料でついてくる「モーニング」というサービスがある。これは、いつどのようにして始まったのか。ライターの大竹敏之さんの著書『間違いだらけの名古屋めし』(KKベストセラーズ)より、一部を紹介する――。(第1回)
なぜ名古屋には喫茶店がたくさんあるのか
名古屋市内の喫茶店軒数は3111軒(2016年経済センサス)。
同じ年の人口230万4794人をもとに1000人あたりの軒数を割り出すと1.35軒となり、図表1でトップに挙げられる高知県の1.46軒に迫る数字になります(もっとも高知県も高知市でデータを出すともっと高くなりそうですが)。これは全国平均の2.5倍にあたります。
なぜ名古屋にはこんなに喫茶店が多いのか?
よくいわれる理由が、土地代の安さ、そして企業の倹約志向です。
1960~70年代の喫茶店の開業ラッシュの時代、名古屋は都市部としては比較的不動産相場が低く、脱サラ組をはじめとする個人でも店を出しやすかったといわれます。
そしてもうひとつの理由が名古屋企業の倹約精神。「社内に応接室なんてもってぁにゃぁで(もったいないから)すぐそばの喫茶店で商談しやエエがね」。
中小企業の社長たちのそんなシブチン気質のため、オフィス街などで多くの喫茶店が必要とされ、また繁盛したというのです。
近くの喫茶店=会社の応接間
名古屋の喫茶店ではコーヒーチケットも普及していて、10枚綴りで一杯分お得になるなど、常連の必須アイテムとして重宝されています。
これを自分で携帯するのではなく、店にあずけて壁に貼っておいてもらうのもユニークな習慣です。リピーターにとっておトクなこともさることながら、応接室代わりに利用する企業にとっても都合のよいツール。これなら取引相手を前にして財布を出す必要がなくスマートです。
名古屋でのコーヒーチケットの浸透は、喫茶店を商談に使う常連の企業が多かったからとも考えられます。