求められるのは「相手の話を聴きながら教える」

また次に、指導は、行為に対して行い、それを超えて、その人の人格一般の非難にまで及ばないよう意識する必要があります。

例えば、作成する書類に誤字の多い社員がいたとします。その人に対して、誤字が多いので、自信のないところは辞典やインターネットでよく確認するようにと注意指導することはよいですが、それを超えて、その人に対して、「小学生以下」などと非難してみても、問題は何も解決しません。

加えてそのように非難された本人は、注意をした人に強い反発を感じ、以後、業務が円滑に進まなくなる恐れすらあります。

若手時代に「背中で覚えろ」という文化で育ってきた世代からしてみると、イマドキの若い者はと言いたいところかもしれませんが、ひと呼吸おいて“相手の話を聴きながら教える”ということも時代の要請かもしれません。

「ただ叱る」より、叱る理由を明確に

「叱り方」についても、相手への配慮やテクニックが重要となります。

特に、乱暴な言動に慣れていない世代の社員は、強めの声で怒られるだけで「パワハラを受けている」と感じる場合もあります。

桶谷治、小嶋麻鈴『社長も社員も幸せになる 労働トラブルゼロ会社のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
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ですから、どうしても強く注意しなければいけないときは、その叱り方に細心の注意を払わなければいけません。

仮に、パワハラとは思われずとも、「怒ると怖い人」と認識されてしまうと、二度と叱られないようにと、ミスを隠そうとする可能性があります。そうすると、早い段階で、上司のもとに必要な情報が上がってこなくなり、致命的な状態でそのミスが明らかになるという結果になりかねません。

そこで意識していただきたいのが、「ただ叱る」恰好にならないことです。

2017年度の人事院年次報告書によれば、厳しい指導を受けたけれど「それらの言動をパワハラとも思わず、不満も感じなかった」と答えた回答者は4.8%であり、この報告書には、そのように回答した理由も記載されています。

不満を感じさせなかった叱り方の上手な人は、

「お客様のため」
「安全のため」
「仕事の質を上げるため」

など、叱る理由を明確にしているそうです。

信頼する上司から、「仕事のために必要」な注意と伝えられて叱られる分には、「業務上必要かつ相当な範囲」であると、叱られた側も感じるわけです。

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