職場のハラスメントの中で、最も相談件数が多いのがパワハラだ。どんな言動が「パワハラ」となるのか。弁護士の桶谷治さんと小嶋麻鈴さんの共著『社長も社員も幸せになる労働トラブルゼロ会社のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を紹介する――。
厚生労働省が定義する「パワハラの3要素」
本稿では、ハラスメントの中でも特に問題となりやすい、パワハラから見ていきましょう。
厚生労働省は、職場におけるパワハラについて、
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
これら3つの要素を全て満たすものをいう、としています。
「職場」とは、労働者が業務を行う場所のことを言います。労働者が通常働く場所以外の場所であっても、業務を行う場所であれば、取引先の事務所や、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等も、「職場」に含まれます。
次に、「労働者」とは、事業主が雇用する労働者の全てを言います。いわゆる正規雇用労働者だけではなく、パートタイム労働者、契約社員など、非正規雇用労働者も「労働者」に含まれます。
意外と気づきにくい「過大・過小な要求」
パワハラの定義は抽象的で分かりにくいため、パワハラの具体的な類型を見ていただいた方が、イメージが湧きやすいかもしれません。厚生労働省は、パワハラを6つの類型に分類しています。
身体・精神への攻撃といった誰もが納得する例から、過大・過小の要求など、意外に気づいていない行為がパワハラとされていますので、ぜひこの機会に確認してみてください。
なお、中小企業のパワハラ防止措置は、令和4年4月1日以降は、法律で義務化されています。違反したことによる罰則はありませんが、厚生労働大臣が必要と認めた場合には、助言、指導、勧告の対象になるほか、勧告に従わなかった場合には、会社名が公表される可能性があります。よって、中小企業にとっても、パワハラ対策は、決して他人事ではありません。