ウォーゲームの結果を見る限り、台湾は中国に併合されずにすみそうだが、敵味方双方が多大な犠牲をまぬがれない。台湾の経済とインフラは壊滅状態となり、大きな損失を出した米軍は世界戦略の見直しを迫られることになる。一方で、侵攻作戦の失敗が中国共産党に及ぼす痛手は予想もつかない。共産党の一党支配の継続も危うくなるだろう。
「短期間の戦闘であることを考慮すると、米空軍はベトナム戦争以降、海軍は第2次大戦以降、最大の損失を出すことになる」と、著者らは指摘する。
最も楽観的な予測と最も悲観的な予測を除いた標準的なシナリオでは、台湾空軍は534機の戦闘機、海軍は38隻の大型艦船を失う。台湾軍の死傷者はおよそ3500人に上り、局地的な陸戦での死者がその3分の1を占める。
米軍の死傷者と行方不明者は1万人近くに上り、ゲームの結果を平均すると、米海軍は空母2隻、駆逐艦や巡洋艦など20隻を失う。空軍の損失は軍用機168〜372機だ。
アメリカと安全保障条約を締結している日本は、在日米軍の基地が中国のミサイル攻撃にあえば、戦闘に参加することになると、著者らはみている。日本の自衛隊は軍用機122機、艦船20数隻を失うことになりそうだ。
撃退に必要な4条件
著者らによると、中国も「酷い損失を被る」という。「海軍はずたずたになり、水陸両用部隊の中核は失われ、何万もの兵士が捕虜となる」中国は軍用機161機、艦船138隻を失う。戦闘による死傷者は7000人に達し、その3分の1は死者だ。それとは別に1万5000人が渡航中に海に落ち、その半数が溺死する。捕虜となる兵士は3万人を超える。
多大な犠牲は避けられないにせよ、米軍主導の防衛軍が侵攻軍を撃退するには4つの条件が不可欠だと、著者らは述べている。台湾が抗戦すること。アメリカが即座に、かつ直接的な介入に踏み切ること。米軍が日本の基地から作戦を展開できること。そして、中国の水陸両用作戦を妨げるために、米軍に対艦ミサイルの備蓄が十分にあること。
台湾軍がやられても、台湾の人々が降伏を拒んで徹底抗戦すれば、中国の占領はせいぜい数カ月程度で終わるだろう。アメリカには台湾を守る法的義務はないが、専門家によれば、中国軍の上層部は米軍の介入を前提として作戦を立案しているという。