ウクライナ戦争は日本にどんな影響を与えているのか。経済評論家の渡邉哲也さんは「G7による対ロシア制裁は、中国にもプレッシャーを与えている。アメリカをはじめ、各国が太平洋を中国から守る動きが活発化しつつある」という――。

※本稿は、渡邉哲也『世界と日本経済大予測2023-24』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領=2022年11月9日、米ワシントン
写真=EPA/時事通信フォト
ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領=2022年11月9日、米ワシントン

侵攻開始当初からロシアが苦戦するのは明らかだった

ウクライナ戦争における「ロシアの苦戦」は、侵攻開始当初から明らかだった。戦争の過程を振り返りながら考察を試みよう。

侵攻開始直後、国連安保理でロシアの即時撤退を求める決議案が審議されたが、ロシアの反対で否決となった。常任理事国の持つ拒否権という強大な既得権で外交的勝利を収めたものの、国連総会でのロシア非難決議は賛成141ヵ国(反対はロシアを含む5ヵ国)で可決され、ロシアは孤立状態に追い込まれた。

さらにスウェーデンとフィンランドがNATO加盟を申請。この北欧2国は、縦長に領土を有している。ここがNATOに組み込まれると、バルト海からの外洋への出口が遮断される。カスピ海からは外に出られない。すると、ロシアが欧州サイドから外洋に出るには、黒海しかない。