黒海とバルト海の不凍港を失って外洋に出られなくなった
ロシアにはノヴォロシースクという黒海に面した港があるが、それを活用するにはクリミア半島のセヴァストポリにある軍港が邪魔である。それゆえにロシアはどうしてもクリミア半島が欲しかった。2014年にクリミア半島を押さえて、ようやく黒海からの出口を確保したが、今回の軍事侵攻でボスポラス海峡とダーダネルス海峡を塞がれてしまった。
この2地点が通れないと結果的にどこにも出られない。絶体絶命である。
軍事侵攻で黒海とバルト海の不凍港を事実上失い、外洋に出られなくなったロシアに対し、米欧(NATO)は攻撃の手を緩めない。とはいえ、ウクライナに決定的に勝たせるつもりもない。
戦闘を長引かせ、米欧の対抗勢力であるロシアの弱体化を進めておこうという計算もしているはずだ。
国際的なロシア制裁の合意形成が中国に与えるプレッシャー
ウクライナ侵攻を通じて、G7のあいだで金融制裁や輸出管理強化などの国際的なロシア制裁の合意形成ができた。現行の国際秩序に抗う勢力に対して、全方位の制裁が選択肢として新たに加わった。このことは、中国がもしも台湾有事など起こした時には、なんらかの国際的な制裁を科すことが可能になったということを意味する。
米国は、この対ロシア制裁モデルを中国に応用することも想定している。台湾侵攻を考えている中国にとって計り知れないプレッシャーとなろう。
2022年9月15日、上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて習近平国家主席とプーチン大統領が会談したが、その席で習主席は「ロシアと互いの核心的利益に関わる問題で支え合い、貿易や農業などの分野で実務的な協力を深めていきたい」と口にした(9月16日付「毎日新聞電子版」)。
中国が「核心的利益」という表現を使う時には、台湾や香港を指す場合が多い。この習主席の発言から、「台湾問題ではロシアからの支持を期待しながら、ロシアへの支援は貿易や農業などの分野に限られ、軍事的な支援はしない」とも読み取れる。ロシアからすれば頼みの中国に距離を置かれたのは大きな痛手と言える。