電撃訪台もありうる…台湾防衛をめぐる2つのシナリオ

近くありうるシナリオの1つとして考えられるのが、米大統領の訪台だ。1972年のニクソン大統領の電撃訪中とは逆のパターンである。

渡邉哲也『世界と日本経済大予測2023-24』(PHP研究所)
渡邉哲也『世界と日本経済大予測2023-24』(PHP研究所)

そして、その場で米台安保条約を結ぶ。国交つまり、国家承認だけでは侵攻のリスクを上げるだけなので、安保条約まで同時に締結する。これと似た例がある。

1951年9月8日、いわゆる旧日米安保条約がサンフランシスコ平和条約の同日に署名されたのと同じ考えだ。

サンフランシスコ平和条約では占領軍は講和が成立したら速やかに撤退すると定められていた。そうなれば日本は軍事空白地帯になり、ソ連と中国が侵攻する危険性があった。

両国は平和条約に署名していないうえ、当時は中ソ友好同盟相互援助条約が結ばれたばかりで、その第1条には中ソが日本に対する共同防衛を行なうことが規定されていたため、米軍が引き上げた瞬間に侵攻が始まるおそれがあった。

中ソの侵略を防ぐためには日米安保条約が是が非でも必要だったわけで、この時の方法を台湾にも使うことは米国としては取りうる選択肢だ。

大統領権限で台湾がアメリカの準州になる道も考えられる

もう1つのシナリオが「準州構想」。台湾がアメリカの準州になるというもの。バイデン大統領は台湾防衛にコミットするが、台湾独立は支持しないとしている。準州とするのは独立ではないから、バイデン大統領の言う「独立は支持しない」という言葉に反しない。いざとなれば大統領権限でできる範囲のことでもある。

こういうことを書くと「何を夢のようなことを言っているんだ」と思われるかもしれないが、夢にも思わなかったことが起きるのが国際政治である。

1980年代初頭に誰かが、「10年以内にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一される」と言っても、誰も信じなかったと思うが、現実の世界は人びとの想像を超えた動きを見せた。台湾に関してもアッと驚くことが起きる可能性はある。そして、この話は単なる夢物語でないことははっきりと申し上げておく。

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