2024年4月から「働き方改革関連法」が施行され、トラックドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限される。経済評論家の渡邉哲也さんは、「現状では物理的に人が足りない。このまま何も手を打たなければ、2025年の大阪万博開催も危ぶまれる。特例を設けるなど法的技術で問題を先送りするべきだ」という――。
※本稿は、渡邉哲也『世界と日本経済大予測2024-25』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
トラックドライバーがまったく足りない
2023年上半期の企業倒産件数は、帝国データバンクによると4006件だった(負債1000万円以上の法的整理対象)。これは前年同期比31.6%増で、上半期で前年を上回るのは6年ぶりである。
この数値だけを見ると、日本経済の危機とも思えるが、そうした見方は短絡的である。
コロナ禍という空前の厄災に襲われながらも、企業倒産数がそれほど増えなかったのは、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)や、補助金・助成金によって助けられてきたから。もともと潰れそうだった企業が、コロナ禍のために生き延びてきたのである。
コロナ禍がいち段落したあとで、そのような企業が結局次々に息絶える状況になったことは、端的に言えば、社会構造の変化に伴う淘汰である。
現在見られる新たな傾向は、人手不足による倒産が多いことである。2024年に働き方改革関連法の適用がドライバーの時間外労働時間に及び、上限(年間960時間)が設けられることで、運送業界が大ダメージを負うと言われている。これを「物流の2024年問題」と呼ぶ。
全日本トラック協会では2024年問題によって、輸送能力が14.2%不足し、2030年にはそれが34.1%まで上昇すると試算している(「物流の2024年問題を知っていますか?」『公益社団法人全日本トラック協会』)。