実体経済にも大きな影響が出るはず

仮に34.1%の輸送能力が不足した場合、今日発送し、明日到着するはずの100個の荷物が、66個しか届かないという事態が想像できる。

同協会では再配達を減らす配慮や、まとめ買いによる運送回数の削減などを呼びかけており、多少の緩和は見られるかもしれないが、抜本的な解決にはほど遠い。

運送業界で貨物・荷物の滞りが発生した場合、実体経済に及ぼす影響は甚大だ。人手不足倒産がさらに拡大する可能性は十分考えられる。

建設業にも同様の「2024年問題」が

しかしながら、人手不足による倒産であれば、倒産時にそこに勤めている人たちには行き場がある。同じく人手不足の別の職場に転籍が可能だと思われるからだ。

産業構造の変化は、時代の移り変わりとともに、ある程度受け入れざるをえないものだ。政府の使命は、それに伴う失業者を出さないことであって、会社を倒産させないことではない。そこを混同して語る人が多いように感じられる。

直近の2024年問題に関して言えば、特例を設けるなど法的技術で問題を先送りするのが賢明であろう。現状では物理的に人が足りない。

スタジアムの建設現場
写真=iStock.com/David Crespo
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働き方改革関連法の時間外労働の上限規制で、自動車運転業務にかかる部分は2024年4月1日施行と決まっていたが、ここ1、2年、コロナ禍で需要が低迷していたために問題になることが少なかった。

ところが、コロナ禍の一応の収束を見て需要が回復してきたら、「あと1年を切っている」と騒ぎになってきた。日本中で人手不足のなか、より一層人手不足を悪化させて経済が回るはずがない。

建設業界の上限規制も2024年から始まる。このまま何も手を打たなければ、2025年の大阪万博開催も危ぶまれる。

日本国際博覧会協会は、パビリオンの建設に関して、時間外労働の上限規制の対象外にするように政府に求めた。建設が遅れ、輸送が遅れ、オープン前に突貫工事もできないというジレンマに陥っている。

働き方改革と引き換えに国際的信用が失墜する損失をどこまで政府は認識しているのか。そう考えると改正法の施行を遅らせる以外に方法はない。