命がけで戦う婚活儀式「ドンガ」
エチオピアのムルシの人々にはもう一つ興味深い風習があります。
それが「究極の婚活儀式」である「ドンガ」です。
「ドンガ」は毎年雨期の終わりにおこなわれます。
この儀式では、ムルシの男性同士が長さ1.2メートルほどの細長い棒、通称「ドンガスティック」を使って、命がけで闘います。
ドンガでは同じ村の男性同士は戦いません。
また開催される場所や時間は、村の長老たちの会議で決められます。
戦いは、どちらかがギブアップするか、大きな怪我を負うまで続きます。
一応審判はいるのですが、ギブアップするとその後2年間儀式に参加できなくなるので、男たちは命がけで戦います。
本当に死者が出ることもあります。亡くなった場合、相手の家族に牛などを送るという賠償制度すら用意されています。
戦いに勝った男性は、村人に担がれて女性が集まる場所へと向かい、そこで待つ目当ての女性の前に、「ドンガスティック」を置きます。
もし、女性が男性を気に入れば、自分のブレスレットをドンガスティックの上に重ねて置き、これでめでたくカップル誕生となるわけです。
しかし、勝利できない男性は、いつまでたっても、女性にプロポーズする権利を得ることができません。
ムルシの男性にとって、「ドンガ」は己の勇敢さをアピールする場であり、また人生の伴侶を見つける場でもあるのです。
この「ドンガ」は、私が現地を撮影した2008年の時点では実施されていましたが、あまりにも危険な儀式ということで、2011年以降、国によって禁止されてしまいました。
しかし、ムルシの人々の要望によって、2015年より再開されることになります。
そのくらい、彼らにとっては必要不可欠な儀式だったのです。