より強い遺伝子を持つ男を伴侶にしたい

ドンガという過酷な儀式が生まれたのは、エチオピアのムルシの人々のライフスタイルが影響しています。彼らは牧畜の民であり、一日の大半を野外で過ごすので、異性と巡り会う機会がありません。そのため、ドンガのような公開イベントが必要になったのです。

女性は、少しでも大きいデヴィニャをつけようとし、男性はドンガで命をかけて戦う。

こうしたムルシの風習について、彼ら自身はどう考えているのでしょうか。

村に住む78人の女性の約半数にあたる36人に、「なぜ、ドンガの儀式をやるのですか?」と尋ねてみました。

すると27人は、以下のように答えました。

「強い男に求愛されたい。そのために美人になりたい」

「強い男に求愛されたい。そのために美人になりたい」(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Bartosz Hadyniak
「強い男に求愛されたい。そのために美人になりたい」(※写真はイメージです)

一方、ドンガに参加するオルデセニという青年の母親に、「息子さんが命がけの闘いに参加して心配ではないのですか?」と尋ねたところ、以下のように答えてくれました。

「心配だけど頑張ってほしい。でないと、息子は一生結婚できず、家系も途絶えてしまう」

自分の子孫を残すために、より強い遺伝子を持つ男を伴侶にしたい。そのために、女性は自分の身体を傷つけてでも美しさを追求する。

男性は、美しい女性を妻にするために命をかけて戦い、勝ち残った者だけが求愛の資格を得る。

図式としては動物行動学の原理そのもので、究極的にシンプルです。