2つの戦略でジャンプ超えを目指す

さらに、ジャンプ+でトライアル&エラーできるのは新人だけではない。ベテランの漫画家が、自らの作家性を存分に発揮して、自由に作品を発表できる場としても活性化を進めている。紙の雑誌にあるページ数の制約、雑誌のコンセプトに合わないなどの内容の制約。こうした制約から解き放たれ、面白ければ、内容もボリュームも自由で何でもあり、という理想的な場になっている。

ファイアパンチ』や『チェンソーマン』の人気漫画家・藤本タツキ氏がジャンプ+で発表した新作読み切り『ルックバック』は、143ページという長編をあえて前後編で分けずに一気に公開し、そのメッセージ性の高い内容が大反響を呼び、公開初日だけで250万閲覧を突破するほどの爆発的な関心を集めた。

ファンを増やす緻密な仕掛け

大ヒット漫画を作ること、そのためにヒットを作る新しい仕組みを作ること。この2つを達成して「ジャンプ超え」を目指すジャンプ+は、新たな刺激のフックとなる読み切り作品を提供し続けることで、「次はどんなヒットが生まれるか」と目が離せないコンテンツとなり、無関心化を進める読者の心さえも惹きつけることに成功している。

タブレットで遊ぶ子供
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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加えて、ジャンプ+では、連載作品は最初の3話と最新の3話がいつでも無料で読めるサービスや、アプリをダウンロードすれば初回は全話無料で読めるボーナスが用意されている。これも無関心化を進める読者に歩み寄り、話題作・人気作にすぐ追いつけるサービス提供によって、関心を持った読者を逃がさずに、一気読みでハマりこんでファンになってもらう仕掛けが緻密に設計されている。2023年1月からは、ジャンプ+の新連載作品は原則すべて国内外同時連載とする方針を発表しており、英語版を世界中に発信することで、ヒット規模のグローバル拡大を目指している。