マンガから始まったテレビアニメは多い。原作は同じなのに、アニメ化すると絵柄が異なるケースがある。なぜなのか。アニメ監督の大塚隆史さんは「原作のマンガは、あくまでも“原案”にすぎない。アニメとマンガとでは、キャラクターの描き方が大きく異なるが、これには、製作上の事情がある」という――。(第1回)

※本稿は、大塚隆史、堀田孝之、フナヤマヤスアキ『アニメができるまで』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

漫画
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製作かかわるメイン3本柱は監督が選ぶ

Q キャラクターデザインって何ですか?

【ユーリ】監督! 今日もよろしくお願いします!

【監督】よろしく。前回は製作委員会が組織されて、制作プロデューサーから監督を任命されたら、監督は作品のビジョンを示すことが大切だと話しました。

そして、そのビジョンを実現してくれるメインスタッフを決めていくことになります。3つのメインスタッフは覚えているかな?

【ユーリ】えっと。誰だっけ(笑)

【シンジ】「キャラクターデザイナー」「美術監督」「脚本家」です。

【監督】そのとおり。その3本柱を、誰にお願いするか決めることになります。企画によっては、すでにメインスタッフが決まっているケースもあるけど、僕はそういう仕事はできるだけ避けたい。この3本柱はアニメの出来を左右する大きな要因だから、信頼ができて、ビジョンにも合ったとびきり優秀な人にオファーしたいからです。今日はその中でも、特に重要な「キャラクターデザイン」について話しましょう。

実写でなら俳優が1人でこなす仕事を分業している

【ユーリ】キャラクターデザインってそんなに重要なんだ。てか、キャラクターデザインって何だっけ(笑)。

【監督】アニメを観るときに、なんかこの絵は好き、とか、嫌いとかってない?

【ユーリ】あ、あるかも。キャラの絵を見て、この絵、なんか好きじゃないってのある。

【監督】だよね。どんなにすばらしい物語だったり、音楽がかっこよかったりしても、キャラがその物語に合っていないデザインだと作品が魅力的でなくなってしまう。

【ユーリ】なるほど! つまりキャラクターデザインって、登場するキャラの絵柄のことだ!

【監督】うん。実写に置き換えてみると、わかりやすいです。キャラクターデザインは、実写でいうところの「俳優のキャスティング」のようなものです。実写で、どんな姿をした俳優が出ているのかって、作品の出来を決めるめちゃくちゃ重要なことだから。

【ユーリ】アニメの俳優って、声優さんじゃないの?

【監督】実写における俳優と、アニメにおける声優はイコールではありません。実写だと、「外見」と「芝居」と「声」という要素を、一人の俳優がまとめて担当しています。アニメの場合は、キャラクターデザイナーが「外見」を担当し、アニメーターが「芝居」をして、声優が「声」を出すという分業によって、一人のキャラを作っていると考えればいいんだ。

【ユーリ】なる? !! そう言われてみるとそうだ。

【シンジ】アニメーターが芝居、っていうのがよく理解できません。アニメーターは「絵を描く仕事」じゃないんですか?

【監督】良い視点だね。その点については、あとでじっくり話しましょう。