※本稿は、大塚隆史、堀田孝之、フナヤマヤスアキ『アニメができるまで』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
物語はどうやってできているのか
Q アニメの物語はどうやってできる?
【監督】今日はシナリオの話もしようか!
【ユーリ】はい!
【監督】シナリオが何かはご存じかな?
【ユーリ】脚本のことだよね。学校の文化祭で演劇の脚本を作ったことあるよ。アニメの脚本も同じようなもの?
【監督】基本的には同じだね。登場人物が、いつ、どこで、どんなセリフを言ったり、どんな動きをしたりするのかが文字で書かれているのがシナリオです。
監督が決まると、プロデューサーと一緒に、「キャラクターデザイナー」「美術監督(美術設定)」を選び、同時に誰を「脚本家(シリーズ構成)」にするのか決めなければならない。この3本柱は同時並行で進んでいく。シナリオを固めていきながら、登場人物のキャラクターデザインや、背景の美術設定をどうするかをどんどん決めていきます。俳優とロケ地とシナリオが決まれば、いよいよ本格的なアニメ作りがスタートするというイメージです。
【シンジ】監督はすべてに顔を出して大忙しですね。
【監督】アニメ作りの全工程で、判断をくだすのが監督の役割だからね。
「原作マンガ1巻=アニメ1回分」ではない
【ユーリ】監督ちょっとストップ。「シリーズ構成」って何?
【監督】たとえば、今僕がやっているマンガ作品のアニメ化は、コミックスの1巻から15巻を4クール=48話でアニメにする企画です。そうすると単純に、原作の第1巻をアニメの第1話にすることはできないよね。テレビアニメは本編が1話およそ21分なのだけど、マンガはその時間に収まるようには作られていない。だから、たとえばマンガの1巻では3話分作るけど、2巻は内容が濃いから4話分作る。でも3巻はアクションが多いので1話分にまとめてしまう……といった具合に、アニメシリーズ全体で、各話、マンガのどこからどこまでを描くのかを決めるのが「シリーズ構成」の役割。もちろん、監督や制作プロデューサー、テレビ局のプロデューサーなどと打ち合わせを重ねて決めていきます。
Q シリーズ構成って私にもできそうじゃない?
【ユーリ】シリーズ構成、簡単そうじゃない?(笑)
【シンジ】俺もそう思った。自分にもできるかも。
【監督】作業としては難しく見えないかもしれないけど、アニメにおける時間の流れとか、各話の盛り上がりとか、この回は決めゼリフで終わらせようとか……いろいろ考える必要がある。全体のバランスを考えて作品のビジョンから外れないように、必要であれば、大きな変更・入れ替えをするなどして、マンガの印象どおりに観てもらえるように工夫するのが「シリーズ構成」だといえます。