自販機では定価販売が原則。自販機の販路が拡大すれば、売り上げの増加につながるだけでなく、商品の値崩れにも歯止めがかけられる。さらに、大手メーカーの場合、自社で自販機を一括運営しているケースが多く、自販機は利益貢献度も高い。「設置先に払う手数料を除けば、利益を自社で総取りできる。小売店に払う販促費や割戻金などの経費も必要ない」というのが各メーカー関係者の共通認識になっている。

また、自社一括運営の場合、「自販機はいわば直営店」(キリンビバレッジ)という点も見逃せない。小売店と違って自販機の品揃えはメーカーの思い通りにできるので、商品の販促や市場調査にも活用が可能だ。つまり、自販機から顧客の嗜好などの情報を直接収集できるのだ。

確かに「飲料自販機の市場はすでに飽和状態で、設置できる立地は限られてきた」こともメーカー関係者の共通した見方ではある。しかし、売り上げの約4割を占める自販機の販路を確保することは、飲料メーカーが勝ち残るための至上命題。となれば、不採算の自販機の撤去が進む一方で、好立地の奪い合いが激化することは必至だ。

陣取り合戦の主戦場と目されるエリアは、販売効率も運営効率も高い都市圏。なかでも、大手メーカーが虎視眈々と狙っているのはオフィスや工場、公共機関といった事業所だ。関係者によれば、今や事業所が自販機の設置場所の主流になっている。

「まわりの自販機や他業態と不特定の顧客を取り合う路面よりも、確実な固定客を見込める事業所のほうが魅力的。それに、事業所向けの販路開拓はグループ力を活用できる我々にとって有利だ」と、ある大手メーカーの幹部は胸の内を明かす。

みなさんのオフィスでも、ある日突然、飲料自販機が撤去されたと思ったら、すぐに違うメーカーの自販機が設置されることが起きるかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩 図版作成=ライヴ・アート)
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