魚のよし悪しには敏感な日本人
外食産業の市場規模は1997年をピークに縮小し続けている。そのなかで、例外的に売上高、出店数を伸ばしているのが回転寿司のチェーンだ。
回転寿司のコスト構成比を、顧客層(郊外型ファミリー)はほぼ同じだが、苦境に立たされているファミリーレストランと比べてみよう。
飲食店を運営するのに必要な主要コストは食材費、人件費、水道光熱費、家賃の4つ。なかでも食材費に注目してみよう。飲食店では、売り上げに占める食材費の割合を原価率と言う。この原価率は、ファミレスの場合は30%程度というのが業界の常識となっている。ところが、スシローの原価率は51~52%、くら寿司も50%近い。かっぱ寿司は40%弱。つまり寿司のネタにお金をかけているのだ。このご時世、原価にしっかりお金をかけているところほど伸びているというわけだ。
和洋中と幅広い食材を扱わなければならないファミレスに比べ、回転寿司は魚に専門特化している。その分、仕入れルートの確立、一括大量仕入れなどで価格以上に質のよいものを手に入れられる余地も大きい。
客の持つイメージは「どうせ一皿100円前後。安いネタを提供して儲けを出しているのだろう」となりがちだが、実際は「安くて美味しかった」と、お得感を抱いて店を出ることになる。しかも日本人はみな魚の新鮮さや味には敏感だ。美味しいとなれば、次第に評判も高まる。
アメリカでも15年ほど前の不況下で「アウトバック・ステーキ」というチェーン店が成功した例がある。同チェーンも、業界の常識が30%程度だった原価率を45%と非常に高く設定して人気を得た。ステーキも魚同様、質のよし悪しがわかりやすい食品だ。不況の時代、客は店の雰囲気より食べ物そのものの充実感、お得感を求めるのだろう。