さらに、回転寿司大手チェーンは、タッチパネル式の注文、5皿につき一回の景品抽選、新幹線の車両型のお皿に注文品が載ってきて目の前で停車する特急レーンの設置など、高いエンターテインメント性を備えている。それが子供の心をしっかり捉え、ファミレスの地位を奪う理由の一つになっている。

また、人件費も、回転寿司は客数のわりには低めで済む。機械化で寿司を握る職人に本格的な技術は要らないし、フロアで接客する人数もファミレスに比べ少なくて済むからだ。だから、原価率が高くても利益は出る。原価率50%、人件費20%として利益率6%程度と推定していいだろう。

ただ、原価率50%超という異常なコスト構成の業界が今後もずっと好成績を維持できるか否かはわからない。大繁盛のわりには利益も株価もけっして高くはない。リーマンショック以降、高級魚需要の世界的低下で、より品質のよいものが、より安く手に入るという状況が続いており、それが回転寿司業界の上昇スパイラルを支えてもきた。

しかし、客は飽きやすく同レベルでは満足しないもの。今後、魚価が上がって、ひとたびスパイラルが逆回転となったとき、原価率の高さが足を引っ張る要因ともなりかねない。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=小山唯史 撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩 図版作成=ライヴ・アート)