欧米人と日本人では血液中のEPAの量が違った

この事実をもとに、日本のメーカーがペルー沖で水揚げされたカタクチイワシを材料にして、EPAのみを抽出し、純度99%の薬を作りました。この薬は現在、循環器疾患の治療薬としてなくてはならない薬になっています。20年前には考えられなかったことです。病気になる前から、イワシやサバなどの青魚を積極的に食べるようにすれば、血液中のEPAの量が増え、動脈硬化を予防することができます。

新鮮なサバ
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現代医学では、体内のEPA量を測定することができます。血液中のEPAと、肉の脂などに多く含まれる「AA(アラキドン酸)」の濃度の比率を出し、EPAとAAのバランスを調べるのです。これは「EPA/AA比」と呼ばれ、EPAの数値をAAの数値で割って得られます。数字が大きいほどEPAの割合が多いということです。日本人の平均はおおむね0.5程度であるのに対し、欧米人は0.1未満であるといわれています。

魚の摂取量が多いほど認知症になるリスクは低い

しかし、食の欧米化によって、日本人の「EPA/AA比」が下がっていることが問題視されています。私の外来の患者さんの中には、「EPA/AA比」が0.1未満の方がいました。話を聞くと、ほとんど青魚を食べておらず、反対に、毎日のように肉や加工食品、お菓子などアラキドン酸を増やすような食生活をしていたようです。

心当たりのある方は、1日1食からでも青魚を摂る習慣をつけていきましょう。EPAは、血管の老化を抑止するだけでなく、紫外線による肌の老化の予防にも力を発揮します。皮膚の中のコラーゲン成分の老化が、EPAによって抑えられることがわかっています。

また、青魚を食べれば、同時にDHA(ドコサヘキサエン酸)も摂取できます。言わずと知れた「脳機能を高める」成分です。東北大学が65歳以上の日本人約1万3000人を対象にした研究によると、魚の摂取量が多いほど認知症になるリスクが低いことが判明しています。

皆さんの中には青魚が苦手だという人もいるでしょう。今はEPAやDHAのサプリメントは充実しています。食事で補えない栄養は、サプリメントで上手に摂取していきましょう。