一汁三菜で魚が基本の和食は医学的に正しい長寿食

三大栄養素は、適切な量を適切なバランスで摂取することが大切なのです。そのためには、主食(ごはんやパン)、主菜(魚介類、肉、卵、大豆製品など)、副菜(野菜やキノコ類、海藻類)、汁物の、一汁三菜メニューを食卓の基本にするのが望ましいです。一汁三菜を心がければ、三大栄養素に加えて、ミネラルや食物繊維などをバランスよく摂ることができます。

肉をよく食べる人は、意識的に魚介類を増やしてください。特にイワシやサバなどの青魚には、脂質の中でも特に体に良いEPAが豊富に含まれています。EPAは、血管の動脈硬化予防に非常に効果的なのです。

一汁三菜、主食は魚が基本。昔の日本人が当たり前にしてきた「和食」は、医学的に正しい長寿食だといえます。

血管をしなやかにするEPAをイワシ・サバから摂る

私が医師になった20年ほど前、「イワシの油が動脈硬化を防ぐ」などと主張する医師はほとんどいませんでした。一部の循環器を専門とする医師が、イワシやサバなどの青魚の中に含まれている不飽和脂肪酸の「EPA(エイコサペンタエン酸)」には、血液サラサラ効果があり、動脈硬化を予防するのではと予測していました。私もこのグループに属していました。

時を経るにつれ、このことは世界中の疫学研究で明らかにされていきます。EPAが注目されるようになったきっかけは、デンマーク領グリーンランドに住むイヌイットが、デンマークの白人に比べて、心疾患での死亡率が圧倒的に低いという事実からです。イヌイットはイワシなどの青魚を豊富に食べていることから、EPA摂取量が多いほど心疾患の予防効果があると明かされてきたのです。

これを受けて日本では、「JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)」という大規模試験が行われ、EPAには「抗血小板作用=血液サラサラ作用」があり、血管の健康を保って、動脈硬化予防に有効であることが明らかになりました。

この結果は、米国心臓学会の学術集会にも大きく取り上げられ、2007年には世界的な医学誌『Lancet』にも掲載されました。

今でこそ「青魚のEPAは血管に良い」ことは一般の人にも広く知られるようになりましたが、医学的にそのことが証明されたのはまだ十数年前のことなのです。