松江哲明 まつえ・てつあき
1977年、東京都生まれ。99年、日本映画学校の卒業制作『あんにょんキムチ』でデビュー。同作は文化庁優秀映画賞などを受賞。監督作に『あんにょん由美香』『ライブテープ』『トーキョードリフター』など。著書に『セルフ・ドキュメンタリー』『童貞の教室』などがある。

「2011年は日本映画の底が抜けた年」と映画監督の松江哲明は言い切った。その言葉が示すのは、日本映画の裾野を支えてきた自主映画の制作が立ち行かなくなった状況だ。震災以降、主戦場であるレイトショーの動員は低迷し、一部の業者は明らかに採算が合わない発注を繰り返すようになった。閉塞感の中、落命する関係者も現れた。

「限界まで削られた予算のなかで仕事を続けようとすると、疲れだけが残る。よそで働きながら映画を撮る人も増えていますが、現状のシステムではプロを名乗れる作家は育ちません。僕は『これ以上は続けられない、もうムリだ』と音を上げた」

今こそ、金の問題と向き合わなければ自主映画の明日はない。にもかかわらず、業界ではギャラの話が忌み嫌われるような「好きなものを撮るのだから儲からなくて当然」という風潮が連綿と続いてる。そこで松江が「もう『なんとなく』じゃ食べていけない」と強烈な危機感をにじませて著したのが本書だ。

(佐藤 類=撮影)