飲食業従事者は2年で19%減っている

私自身、ここ数年、この中国人とまったく同じように感じていた。先日も都内のあるパソコンショップに行き、エクセルの操作でわからないことがあったので、5分間のオプション料金を支払って教えてもらおうとしたが、「忙しいんだから、そんなことまで教えられない」と強い口調で怒られた。そういうことがあったので、その人の感想にうなずくところが多かった。

むろん、この中国人と私に、偶然同じようなことが起きたのかもしれないし、私たちの寛容さが足りなかったり、会話の仕方が悪かったりしたのかもしれない。たったそれだけで「日本のサービス低下だ」というのは大げさだ、と読者に怒られるかもしれない。

だが、コロナ禍により、日本のサービス産業を取り巻く環境が大きく変化していることは確かだろう。総務省の労働力調査によると、宿泊・飲食の就業者数は2019年10月には約454万人だったが、2年後の2021年10月には約368万人と19%も減少。今年10月、水際対策が緩和されたことなどによって、同11月末に発表された10月分では、宿泊・飲食ともに約390万人まで戻っているが、相変わらず人手不足であることは変わらない。

夕方、人でにぎわうアメ横
写真=iStock.com/LeoPatrizi
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だんだん余裕がなくなっていく日本

興味深いデータもある。帝国データバンクが今年7月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」で、正社員が足りないと答えた企業は47.7%と半数に迫った。パート・アルバイトなど非正社員についても28.5%が「足りていない」と答えた。社員不足が最も顕著なのは「旅館・ホテル」で66.7%と全体の3分の2に上る。パート・アルバイトなど非正社員が「足りない」と最も多く答えた業種は飲食業で、全体の73%だった。

「正社員が足りない」と回答した上位10職種。1位は「旅館・ホテル」だった。帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年7月)」より。

人手不足が引き起こす問題として考えられるのは、サービスの低下だ。日本にずっと暮らしていると、緩やかな変化には気づきにくいし、もちろん、あるサービスに対する評価や、その受け止め方は千差万別であることは当たり前で、数値化できるものではない。

だが、コロナ禍前、私は中国出張から日本に帰国するたびに、日本の接客のすばらしさを改めて痛感したものだった。中国の接客サービスも日進月歩の勢いでよくなっているが、やはり、日本のサービスは高いと、当時は感じていた。前述の中国人男性も長く日本で暮らした経験があるからこそ、以前との比較でそのように感じたのかもしれない。