現時点では、現職が有利という観測が根強い。その根拠は、世論調査の結果だけではない。資金力に明確な差が出ているからだ。大統領選は夏季五輪と同じ年に行われる。同じ「金」でも、メダルより、カネ集め──。米国民を熱狂させる暑い夏が始まる。

戦後史が証明する資金力と集票の相関

米大統領選挙の背後には力を持ったフィクサーがいる――。

これは仮説ではない。実際に選挙結果に相当な影響力を持つ人物が何人もいる。大統領選の表舞台にはあまり登場しないが、「この人物がいなければ当選しなかった」と言っても過言ではない重要人物が少なくない。

(PANA=写真)

ここでは実際のフィクサーたちが選挙戦で演じる役割と、選挙で必要不可欠な資金について解き明かしていきたい。その前に、2012年の大統領選のこれまでの経緯と選挙システムを簡単に述べておく。

米大統領選は4年に一度、五輪と同じ年に行われる。大統領の任期は4年で、最高2期8年までが限度だ。2008年の選挙で当選した民主党のオバマ大統領は、もちろん再選を目指している。支持率は40%台後半を推移し、圧倒的な強さはないが、民主党はオバマ氏を全面的に支援する体制でまとまっている。ヒラリー国務長官や他候補の可能性はもうない。

一方の共和党は、11年春から大勢の候補が名乗りを上げていた。メディアに取り上げられた候補だけでも15人を超えた。11年6月には女性候補のミッシェル・バックマン下院議員が大きく注目されたが、入れ替わるように8月にはリック・ペリー・テキサス州知事が支持率でトップに出た。10月には黒人候補のハーマン・ケイン氏が浮上し、11月にはニュート・ギングリッチ元下院議長がトップを奪うという目まぐるしい戦いだった。