手軽に筋肉量をチェックできる「指輪っかテスト」

もうひとつのポイントはたんぱく質です。これはあとで詳しく説明しますが、筋肉を増やすために欠かせない栄養素です。食事量を減らさず、カロリーとたんぱく質をしっかりとること。これを60代から70代のうちに始めることができれば、筋肉を増やすことができます。じつはこの筋肉こそ、健康貯金(≒貯筋)の最重要項目なのです。

同じ体重でも筋肉量は人によって異なります。最近では筋肉が多い人のほうが長生きする可能性が高いと考えられるようになってきました。いずれ肥満に関する研究のなかで正確な統計データが明らかにされると思います。

手足に比べて体が太い人を中心性肥満と言います。このタイプの人は太って見えても筋肉量が少ないのが特徴です。一方、手足がしっかり太い人は筋肉がついていてより健康的とされています。ここで、簡単に筋肉量がチェックできる方法をお教えしましょう。サルコペニアの検診で用いられる「指輪っかテスト」というものです(図表2)。

【図表2】指輪っかテスト(サルコペニアの簡易指標)
指輪っかテスト(サルコペニアの簡易指標)(出所=『「80歳の壁」を超える食事術』)

まず、親指と人差し指で輪っかをつくってください。その輪っかで利き足ではない側のふくらはぎのいちばん太いところを囲みます。輪っかに隙間ができてスルッと通せる人は筋肉量が少ない人です。輪っかで囲めない人やちょうど囲める人は、しっかり筋肉がついています。

ふくらはぎが細い人は健康リスクが高い

考案した東京大学の田中友規先生によれば、指輪っかで囲めないぐらいふくらはぎが太い人と隙間ができるぐらい細い人を比べると、ふくらはぎが細い人はサルコペニアの発症リスクが3倍も高かったと言います。

BMIを計算しなくても、これだけで要介護度や死亡リスクがわかるとされています。私の勤務する病院でも健康教室を開催していますが、参加している70代から80代の方にこのテストをやってもらうと、ほぼ半数は輪っかに隙間ができてしまいます。つまり筋肉量が不足しているわけです。健康教室に参加する方は健康意識が高い方が多いので、高齢者全体で見れば半数以上の方が筋肉不足ということになるのではないでしょうか。

自分の栄養が足りているかどうかは、血液中のアルブミンの数値でわかります。アルブミンとは、血液中に存在する蛋白たんぱく質(医学用語では漢字を使います)のうち約6割を占める重要な蛋白質で、通常3.9g/dlが基準値。3.6g/dl以下だと低栄養が疑われます。

また、日常生活のなかで低栄養をチェックするには、最近米国栄養士会と米国静脈経腸栄養学会が示した判断基準が参考になります。

①エネルギー摂取量の低下
②低体重
③体重減少
④浮腫(むくみ)
⑤握力低下

この5項目のうち、2項目以上該当する場合には低栄養の疑いがあります。