いつの間にか握力が弱くなっている人が多い

歩行速度の目安は、横断歩道を渡る速さでチェックすることができます。信号が青になって横断歩道を渡り始め、赤に変わるまでに渡り切れなかったら要注意です。

筋力低下はおもに握力で判断します。家事をしていると鍋やフライパンを持ったり掃除機をかけたりするときに握力を使います。家族が減ると家事の負担も軽くなります。いつの間にか握力が弱くなっている人は多いものです。同居する家族から「ほうれん草のお浸しが水っぽい」とか、「布巾がしぼれていない」などと指摘されたら注意してください。

自分でも確認できるのが、ペットボトルの蓋です。あなたはペットボトルの蓋を自分で開けられますか? 「蓋がやけに固いな」と感じたり、子どもや孫に蓋を開けてもらったりしていたら、それはペットボトルのせいではなくフレイルの危険信号です。

ペットボトルを持つ手
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日本では40歳になると、いわゆる「メタボ健診」の対象になります。健診のたびにおへそまわりを測定されるのが憂うつという人もいるでしょう。でも、75歳になるとメタボ健診の対象者でなくなることはご存じでしょうか。じつは2020年から「フレイル健診」が導入され、75歳以降はメタボ健診の代わりにフレイル健診を受けることになったのです。

注意すべきはメタボ対策よりも「低栄養対策」

フレイル健診では、きちんと食事をとっているか、体重が減少していないか、運動をしているか、などをチェックします。後期高齢者になったからといって生活習慣病のリスクがなくなるわけではありませんが、年を重ねるにつれてフレイルのリスクのほうが高くなり、危険だからです。

とにかくやせすぎている人はちょっとしたけがや病気に耐えられません。また、筋肉が弱るとサルコペニアやフレイルになり、その結果、要介護や寝たきりのリスクが高まります。そのため「これからはしっかり食べて体重を増やし、筋肉をつけましょう」という意識の転換が必要となるのです。

いわば、メタボの「過栄養対策」からフレイルの「低栄養対策」へのギアチェンジです。ただし、75歳という年齢はギアチェンジにはギリギリのタイミングだと私は考えています。人によってはすでに手遅れの年齢かもしれません。できればもっと早く、65歳頃から始めるべきだと思っています。

いつからギアチェンジするかについては医学的にも議論の分かれるところです。個人的な差異が大きいのではっきりと境界線を引くことはできませんが、65歳から75歳まではグレーゾーンです。私の経験から言えば、65歳以上、遅くとも70歳を超えたら、メタボ対策よりもフレイル対策を重視するべきです。そのほうが健康的に長く生きる確率が高まります。