健康長寿のためには何をするべきか。リハビリテーション科指導医・専門医の吉村芳弘さんは「年をとると食事量が減ってしまう。65歳を過ぎたらメタボ対策よりもフレイル対策を重視して、とにかく食べることを心がけてほしい」という――。(第2回)
※本稿は、吉村芳弘『「80歳の壁」を超える食事術』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
階段の上り下りがつらくなったら要注意
介護は必要としないけれども、日常生活動作や認知機能に衰えが見られる状態である「フレイル」になると肉体的、身体的な衰えにより日常生活に支障が出ます。
健康寿命に関わる恐ろしい症状ですが、脳卒中のように突然生活が中断されるわけではありません。また、がんのように画像診断などでわかるわけでもありません。しかも、加齢とともに悪化するので「年だから」と見過ごされがちです。
フレイルには、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルの3種類があります。身体的フレイルは筋肉や筋力、体力が衰えた状態、精神・心理的フレイルは、意欲低下やうつ病、認知症などが生じる状態、社会的フレイルは社会的な交流が脆弱になっている状態です。
ひとり暮らしでこもりがちで孤立していたり、近くにスーパーやショッピングモールなどがなく食事の環境が整っていなかったり、ひとりで食事する食生活(孤食)が続くと起こりやすいと言われています。フレイルかどうかを診断するには、簡易的な評価基準が用いられます(図表1)。
体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動のうち1〜2項目が当てはまる人はフレイル予備軍(前フレイル・プレフレイル)、3項目以上当てはまればフレイルと診断されます。急に体重が減ったり、階段の上り下りがいつもよりつらいと感じられたりするようになったら注意が必要です。