※本稿は、吉村芳弘『「80歳の壁」を超える食事術』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
高齢になったら太っていたほうが健康的
「健康で幸せなお年寄り」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか。ひとり人生の思いに浸る仙人のような姿でしょうか。無欲で達観した仙人の域に行けたら、たしかに幸せなのかもしれません。しかし、「健康で幸せか?」と問われると同意できません。「それではこの先10年もたないだろう」と、思います。
私は、熊本リハビリテーション病院で栄養に関するリハビリの専門医として、たくさんの高齢者を診てきました。実際の健康で幸せそうな高齢者は、けっしてやせ細ってもいなければ、無欲で孤高でもありません。
体格はぽっちゃり。静かでも寡黙でもなく、ほがらかでお話し好き。男性より女性に多く見られる印象です。病院の待合室で、すぐに誰とでも友だちになります。治療に来たのか、友だちに会いに来たのかわからないほど、そのような人のまわりには自然と人が集まります。
友だちと連れ立って病院内のレストランに行けば、ぺちゃくちゃおしゃべりしながら、ペロッと一人前の定食を平らげ、お茶飲み話に花が咲く……と、まあ仙人とは真逆のタイプが、私が思う「健康で幸せなお年寄り」なのです。両者のあいだの大きな違いは「体重」なのかもしれません。
高齢になっても健康でいきいきと毎日を送るためには、体重管理が大切です。「健康のために体重をコントロールしましょう」と言うと、誰もが不機嫌に「そんなことはわかっている」と言います。「やせなさい」と言われたような気がするのでしょう。私の言う「体重管理」は違います。高齢になってやせないように。できるだけ太っていてください!
みなさんが健康についてもっている常識とは矛盾していますよね。じつは近年医学の研究で明らかになってきた新事実で「肥満パラドックス」と言います。