65歳以降の過ごし方で人生最後の10年が決まる

コロナ禍で言えば、ステイホームで外出できなくなった結果、食欲が低下して低栄養になり、サルコペニアを生じて身体機能が衰えていく、といった具合です。これを「身体的フレイル」と言います。

身体的フレイル以外にも認知機能の低下やうつなどの心理面が問題になる「精神・心理的フレイル」や、社会的な孤立や食事環境・生活環境の制限が問題になる「社会的フレイル」が生じ、フレイルサイクルから抜けられなくなるのです。ほかのすべての病気と同じように、サルコペニアもフレイルも予防が大事です。人の体はいったん悪化すると、回復するのにたいへんな気力と体力を要するからです。

フレイルサイクルの兆候に気づいたら、どの要因からでもよいので、できるだけ早くアプローチして悪循環を断ち切りましょう。80歳を超えると気力もどんどん衰えていくので回復がますます難しくなってしまいます。多くの人は、がんや心疾患、脳卒中の心配はしても、サルコペニアやフレイルの心配はあまりしていないようです。

吉村芳弘『「80歳の壁」を超える食事術』(幻冬舎新書)
吉村芳弘『「80歳の壁」を超える食事術』(幻冬舎新書)

疲れやすくなったり、足がよろけて転びやすくなったりしても「年とったよね」で済ませてしまいます。じつはそこが、サルコペニアやフレイルの恐ろしいところです。

「まだまだ大丈夫」と油断しているうちに、フレイルサイクルは進行します。冒頭でお伝えした低栄養や体重減少もこのサイクルのひとつです。気づいたときには手遅れで、ガリガリになって動きがとれなくなり、要介護や寝たきりになってしまうのです。どんな晩年を過ごすことになるのかを決めるのは、そうなる前の過ごし方です。

とくに私は65歳以降70代の過ごし方が重要だと思っています。人生最後の10年を健康でよりよく生きることができるように、さらに健康な状態でもう10年生きられるように、いますぐ対策を始めていきましょう。

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