見た目が若く見える人ほど実際に長生きする
人は、生まれたばかりのときはみんな似たりよったりなのに、年を重ねるにつれて外見が変化し、見た目年齢も大きく差がついていきます。たとえば人生をマラソンだと考えてみましょう。
母親のお腹から生み落とされ「よーい、どん」で人生のコースを走り出した瞬間は、ほぼみんな同じ。成長のスピードに多少の違いはあっても、若い頃は同じ年代の人たちがひとつのかたまりになってコースを走っています。ところが青年期頃から足並みが乱れ始め、老年期になると、もうバラバラです。どんな生活習慣を送ってきたか、何を食べてきたか、どんな病気をしたか、などさまざまな要因で見た目がどんどん変わってきます。
80歳をすぎているのに40〜50歳にしか見えない人もいれば、ゆうに90歳を超えているように見える70代の人もいます。同窓会の写真などを見ると、本当に全員同い年なのかと疑うほど、年のとり方には違いがあります。
「年寄りが年相応に老けて何が悪いの」と言われそうですが、見た目はみなさんが想像する以上に重要です。第一印象で「若いな」と思った患者さんは、やっぱり健康で長生きするからです。パッと見て「若いな」と感じさせる高齢者は、やせて頰がこけて骨ばった人より、ぽっちゃりして肌にはりがある人。総じて明るくて前述した「小太り、ほがらか、おしゃべり」なタイプです。
亡くなるまでの10年間は寝たきりの人がほとんど
見た目の若さは偶然のように思えますが、じつは科学的な裏づけがあります。デンマークで行われたある研究によると、70歳をすぎた人の見た目年齢は、その人の寿命と関連していることがわかっています。同じ遺伝子をもつ一卵性双子でも、見た目が老けているほうが先に亡くなる確率が高かったのです。
ただ、長生きするだけで幸せかというと、そうでもない事実があります。日本は世界有数の長寿国です。男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳。いま70歳の女性なら、20年近くは人生を楽しむ時間が残されていることになります。
さて、もうひとつの寿命の統計を見てみましょう。「健康寿命」です。健康寿命とは、介護などを必要とせず、自立して日常生活が送れる期間のこと。統計的に見ると男性は約72歳、女性は約75歳で健康寿命が尽きてしまうのです(図表1)。
平均寿命と健康寿命の差は、男性では約9年、女性では約12年です。言い換えれば、日本人の大多数は、亡くなるまでのおよそ10年間は自立した生活が送れず、要介護や寝たきりで過ごしているということになります。いわば、日本の高齢者はラスト10年を介護や医療によって生かされている状態なのです。