スランプケース3 ストレスで「問題行動」をした

回答:中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さん

受験勉強や親子関係の悪化でストレスが高まり、ついには問題行動に走ってしまう子がいます。

受験直前の12月後半に、Cくんは通学中にわざと水筒の水をまき、近所から学校に通報があり、近所の人に謝罪する事態に。お母さんは、学校から呼び出されたあと、塾に相談の電話を入れました。

Cくんの問題行動は受験によるストレスからくるものだというのは明白でした。Cくんはそのころ塾でも表情が暗かったのです。受験本番が迫る中でプレッシャーを感じていて、限界まで追い詰められていたのでしょう。

そこで私がお母さんに提案したのが、次の週末、思い切って、丸1日Cくんの好きな遊びに付き合ってくださいというものでした。実はその日には、最後の合格判定模試があったのですが、模試は休んでいいと言いました。

「徹底的に遊んできてください。早く帰って、夜に勉強をさせてはいけません。外出先でおいしい夜ご飯をしっかり食べさせてください」と。丸1日遊園地で遊んだ結果、Cくんの表情が劇的に変わり、無事に志望校に合格しました。

澄んだ青空のジェットコースター
写真=iStock.com/Skyhobo
※写真はイメージです

12月のこの時期に、塾を休んで1日遊ぶということに抵抗を感じる保護者は多いと思います。しかし、心が元気でない状態で勉強したり模試を受けたりしてもプラスになることはほとんどありません。遊んだ分、こなせなかった勉強をどこかで補うという考えもナンセンスです。Cくんはこれまで散々勉強をしてきています。親が不安を解消するために勉強をやらせていないか一度考えてみてほしいのです。

中学受験をする子供は、学校に通い、平日の夜と休日には塾に通い、さらに家庭でも勉強をしています。これを社会人に置き換えたら、365日連続勤務。ブラック企業ならぬ「ブラック家庭かもしれない」という視点を頭の片隅に置いて、息抜きの時間をとる余地は残しておくことが大切です。

子供自身はストレスが高まっている状態に気付いていないこともあります。一番近い存在である親に気付いてほしいと思います。

子供のSOSサインに気付く方法のひとつが、塾から帰宅した際の表情です。子供たちは塾に行って友達や先生と話したりすることが、ストレス解消になっていることも多い。それにもかかわらず、無口だったり、伏し目がちだったりした場合、心が元気でないかもしれないと考えてください。

また、お弁当の食べ方でもわかることがあります。塾に持って行くお弁当などは、基本的に食べやすく、子供の好物を入れている家庭が多いと思います。これを残してくる場合は、メンタルに不調を抱えているかもしれない。このほか、子供の睡眠時間にも気を付けてみてください。(渋田さん)

→塾や勉強を休んで、丸1日思い切り遊ぶ

以下、後編(スランプ4~6の対処法)へ続く。

安浪京子さん
算数教育家、中学受験カウンセラー。プロ家庭教師会社アートオブエデュケーション代表。関西や関東の大手学習塾勤務やプロ家庭教師としての経験から中学受験家庭を指導、メンタルケアなど多角的にサポートしている。
渋田隆之さん
神奈川の大手進学塾の責任者を30年間務め、毎年受験生と1対1の面談をするなど丁寧な指導に定評がある。2022年夏、横浜の石川町に中学受験国語専門塾PREXを開校した。
(文・構成=相川いずみ)
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【後編:スランプ④~⑥対処法 を読む】
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