スランプケース1「志望校を変更したい」と言い出した
回答:中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さん
難関中学を目指して塾に通っていたのに、6年生の秋の模試の結果を見て第1志望校のレベルを下げたいと言い出したAさん。五つ上のお姉さんが通っている学校を第1志望としていましたが、偏差値が数ポイント低い学校に変えたいと言うのです。理由を聞くと「私にはこっちの学校が向いていると思う」と言います。
Aさんの志望校変更の裏には、「親を悲しませたくない」という思いがありました。親を気遣うタイプの子は、「模試の合格判定が次も悪かったらどうしよう……」「本番で合格できなかったら……」と先のリスクを考えて、その回避に走る傾向にあります。志望校のレベルを落とせば、親にも心配をかけないだろうし、自分も楽になれる。そんな心理から、戦いの土俵から降りてしまおうとするのです。
ここで気を付けなければいけないのは、志望校のレベルを下げることで、楽になれるわけではないということ。数ポイント下げても勉強の量はほとんど変わりません。むしろ、志望校のレベルを下げることで勉強への意欲がそがれ、成績が下がってしまうことが多いのです。
さらに、志望校は一度変更すると、何度も変更したくなります。6年生の秋以降は過去問を解くなどして志望校に特化した対策をとりますが、志望校変更を何度もするのは、その対策にもロスが生じてしまいます。
この時期に志望校を変更する場合は、変更は1回のみ、塾の先生などに相談して行いましょう。そして第1志望を新たに決めたら、前の志望校のことはすっぱり忘れてしまうこと。
秋の時点の模試で、たとえ志望校再検討(合格可能性30%以下)のラインでも、ギリギリまで志望校を下げないでほしいと思います。安全校を併願すれば第1志望のチャレンジ校を受験できるのも中学受験の良いところです。
子供の気持ちの変化は、模試の志望校を書く欄に表れます。今までとは違う学校を第1志望校に書いてきたり、志望校の順番を変えてきたりしたら、子供の心が揺れている可能性があります。子供が「志望校を変えたい」と言い出したら、じっくりと話を聞いてみることです。子供自身も「自分の悩みに気付いてほしい」と思っていることが多いのです。
Aさんと面談してみると、プレッシャーとなっていたのはお姉さんの存在でした。Aさんの両親は、お姉さんの成績と比べるタイプではないのですが、Aさん自身がお姉さんのようには合格できないかもしれないと不安に思っていたようです。
Aさんの合格判定はそれほど悪くなく、十分合格できる可能性があるので、「お姉さんのことを気にしているんじゃないの? 君にはお姉さんにはないガッツがある。だから今はうまくいっていなくても、これから成績が上がるから大丈夫!」と励まし、志望校は変えないことになりました。4カ月後、無事に志望校に合格できました。(渋田さん)
→「親を悲しませたくない」と気を使っているかも