スランプケース6 「元気」がなくなってしまった

回答:中学受験専門カウンセラーの安浪京子さん

2年生から大手塾に通っていたFくん。6年生の夏から元気がなくなり、9月ごろに「受験をやめる」と言い出しました。志望校別の特訓などのオプション授業には申し込みをしないなど勉強の負担は軽くしていたものの、日に日に元気がなくなり、勉強もほとんどしなくなってしまいました。

Fくんの家はお母さんが「私立中に進学させたい」という方針でした。秋以降勉強をしないFくんとお母さんは喧嘩をすることも増えていきました。

家庭教師としてかかわる中でFくんに「中学受験を続ける前提で考えて、どうしたら元気が出る?」と聞いたところ、彼の希望は「放課後、友達と遊びたい」というものでした。常に塾の宿題が大量にあるので、いつもまっすぐ家に帰るように言われていましたが、Fくんの要望をお母さんに伝え、週に2回、放課後に30分ほど学校で遊んでくる時間を確保するようにしてもらいました。

翌日小学校に持ち物を用意する小学生
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

友達と遊ぶ時間はつくれたものの、Fくんのやる気は上がりません。10月になり、「どうしたら入試まで頑張れる?」と聞いたところ、「癒やしがほしい。犬を飼いたい」とFくんは言いました。近所で飼っている犬の散歩に同行するほど犬好きのFくんは、犬を飼いたいと切望していました。お母さんに伝えてみたものの、「今は勉強に集中する時期。犬を飼うのは受験が終わってから」という答えでした。

ところがその後、ペットショップに行ってみたら、お母さんがある犬にひとめぼれしました。受験勉強の追い込み期である12月、Fくんの家に子犬がやってきたのです。

一時期、親子の仲はかなり険悪な状態だったのですが、犬が来てからピタッと喧嘩がおさまりました。Fくんは受験勉強の合間に犬で癒やされ、お母さんはこれまでFくんの受験に向いていた気持ちが犬に行くようになり、好循環が生まれたんですね。Fくんのやる気も回復し、見事、第1志望に合格しました。

このケースでは、元気がなくなった子供に「どうしたら頑張れるのか」と聞いたことで、子供の素直な希望を聞くことができました。親が考えたご褒美を与えるご家庭もあると思いますが、子供の気持ちを聞くのが一番です。Fくんは自分の希望が満たされたことで、やる気を取り戻すことができました。(安浪さん)

→「どうしたら頑張れるか」を子供に聞く

安浪京子さん
算数教育家、中学受験カウンセラー。プロ家庭教師会社アートオブエデュケーション代表。関西や関東の大手学習塾勤務やプロ家庭教師としての経験から中学受験家庭を指導、メンタルケアなど多角的にサポートしている。
渋田隆之さん
神奈川の大手進学塾の責任者を30年間務め、毎年受験生と1対1の面談をするなど丁寧な指導に定評がある。2022年夏、横浜の石川町に中学受験国語専門塾PREXを開校した。
(文・構成=相川いずみ)
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