古代の風習に基づく「後朝の別れ」

「お〈身持ち〉」とは?

◎みもち【身持ち】品行。行状。操行。とくに異性との交際についての平素のおこないをいう場合が多い。「身持ちが悪い」「身持ちがかたい」

理ない仲になれば、〈逢瀬〉が楽しみになる。

宮崎哲弥『教養としての上級語彙』(新潮選書)
宮崎哲弥『教養としての上級語彙』(新潮選書)

●おうせ【逢瀬】相会う機会。とくに愛し合う男女がひそやかに会う機会。逢引の時。「逢瀬を楽しむ」「逢瀬を重ねる」

三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋になります。死なねばなりません。それでもお会いしたいと思うのです。(映画『陽炎座』鈴木清順監督)

逢瀬を重ね、やがて一夜を共にして情を交わすようになれば、翌朝、別れ別れになってしまうことが辛くなってくる。

後朝きぬぎぬの別れ 男と女が〈交会〉した翌朝のこと。共寝した男女が夜が明けて別れること。

◎きょうかい【交会】人と人とが親しく交わること。または、男女の性的交わり。性交。

《男女の交会も万善の功徳じゃ》(芥川龍之介『道祖問答』)

後朝は本来「衣衣きぬぎぬ」とも書き、二人の衣を重ねて掛けて共寝した明くる朝、別れ際にそれぞれの衣を身に付けた、そのお互いの衣のことをいう。つまり衣と衣の別れが原意である。古くは、そのとき内着を交換したという。「『きぬぎぬ』とは、その際に互いの下着を交換するという古代の習俗に基づく表現である」(吉海直人『『源氏物語』「後朝の別れ」を読む』笠間書院)。

言葉が造出する世界とはかくも奥深く、計り知れない。上級語彙の探究は、言の葉の深奥を探るのである。

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