そうしたさまざまな感情のなかで「不安」というプログラムは最重量級の「重さ」を伴う感情だ。人間は、気になる問題があるとき、その原因をつきとめて排除するよう、情報を集め、複数のシミュレーションを比較検討する。しかし、情報には際限がないので、「見落としがないか」と気をつけながら調べるうちに、不安の可能性のバリエーションがどんどん増えていく。

つまり、結果的に「不安」を煽ってしまうのだ。だから、不安という感情を抱えながら「選ぶ」のは、非常にエネルギーを消耗する行為なのである。体はほとんど動かしていないのに、不安な状態が長期化すると、ストレスで痩せたりすることがあるが、いかに「不安」という感情が「重い」かわかる例だ。

さらに昨今は、「自由」を行使することと、欧米的な「自己責任」がセットになっている。多くの選択肢から選んだ結果はよくも悪くも自己責任、というわけだ。自己責任を常に問われ続ければ、誰だって不安になる。過度なエネルギー消費と不安のセット。これはストレスを生みやすい状況である。

そうした「過度に拡大した自由」によって生じるストレスを「自由太り」と私は呼んでいる。何にせよ、行きすぎは問題だ。そこで、少しだけ「自由」を制限してみてはどうだろう?

軍隊式だからこそ対処できる戦場ストレス

私は現在、陸上自衛隊で心理カウンセラーという職を務めている。戦場や災害派遣といった悲惨な現場で働く隊員たちが滞りなく任務を遂行できるように、あるいは過酷な任務によって抱えることになった強いストレスを可能な限り小さくできるように、メンタル面から支援する職務である。私自身もかつて現場にいたので、隊員たちの心の疲労は理解できるし、人の心がどのような過程を経てダメージを深め、回復していくか、多くの事例をつぶさに見てきた。

自衛隊は多くの規則に「しばられた」組織だ。「自由」が少ないストレスフルな職業とお考えの方も多いと思う。確かに「個人の自由」は一般的な企業と比較すれば少ないだろう。任務における「自由裁量」の領域も狭い。上下関係もとても厳しい縦社会だ。