そもそもこの命令は「何のために」「よろしく」やればいいのか。人事異動の季節で親しくなるきっかけをつくるためか。あるいは、部内の風通しが最近なんだか悪いので、仕切り直すためか。上司が「バーベキュー大会開催」を思いついた「目的」をしっかり伝えなければ、目的も内容もブレていき、せっかくの懇親会が台なしになる可能性がある。

懇親会なら、まだ「失敗」してもいい。だが、大事な仕事の場で、この「ひとつよろしく」をやってしまうと、仕事が滞るうえに、部下は責任を強く感じて、本来抱える必要がない大きなストレスを抱えることになる。滞りのない仕事のためにも、部下をムダなストレスから守るためにも、目的、期日、予算、「使用可能なシステム」や人員など、部下に任せる「裁量の幅」をしっかり伝える必要がある。

「裁量の幅」を細かく伝えること。それは面倒なコミュニケーションかもしれない。それなら自分がやったほうが速いと思う人もいるだろう。しかし、対人間のコミュニケーションというのは思惑だらけでもともと面倒くさいものなのだ。だからこそ、少々面倒でも上司は部下に詳細な指示を出して思惑や広すぎる自由裁量権を排除してあげてほしい。

また、上司と部下に挟まれる中間管理職は、いろいろな判断ができるスキルと経験をすでに持っているのに身動きがとりづらく、「とてもしばられている」と感じる場面が多いと思う。それゆえ、「しばられる」ことにマイナス感覚を持っているかもしれない。「俺には裁量権がない」「俺は外に出て自分の力を発揮したいから退社しようかな」といった不満もあるだろう。

しかし私は、「あなたが置かれている状況はそんなに悪くないですよ」と言いたい。制限された裁量権のなかで、精一杯のパフォーマンスを出すことに集中できる、というのは日本人が力を発揮しやすい条件と考えているからだ。