最終的には学校の判断になる
「審査室は、野球指導者、弁護士、学識研究者など9人で構成されています。処分申請をする方から原案を出し第三者機関である審査室は、これに基づいて審議します。
暴力についての処分は前よりもどんどん厳しくなっています。ただ何発殴ったら何カ月ということではなく、常習性なども判断します。初めて暴力を振るったケースより、2回3回となれば、当然処分は重くなります。
謹慎処分は、1カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、そして除名。ただそれに『報告義務違反』などがつくと1カ月追加などの処分になります。暴力事件の場合、刑事事件になることは当然ありますが、立件されたか、されなかったかは特に関係ありません。
学生野球協会では、『体罰』は教育の一環ではなく『暴力行為』だと、明確に規定し、否定しています。暴力を処分するだけでなく、高校、大学では指導者研修会も行っています」
しかしながら、内藤氏は、
「学生野球憲章上は、部長や監督は学校長の責任で任命することになっています。最終的には、学校の判断です。特に私学の場合、校内における対応については、理事長などの判断で指導者に対して甘い処分になるケースがないとは言えません」と語った。
部活から暴力をなくすために必要なこと
これまでの取材からも、日本高野連が「野球の健全化」の方針にシフトしつつあることは明らかだと思う。「球数制限」の導入や「暴力、パワハラの排除」にも取り組んでいる。
しかし、各県の高校野球や学校は、必ずしも日本高野連の動きに従っているとは言い難い。
少子化などで学校経営が厳しくなる中、「勝利至上主義」で運動部に期待をかける学校も少なくないのだ。冒頭の姫路女学院高校もそういう姿勢のように見える。
筆者が取材した甲子園常連校の監督の中には、
「謹慎処分になって、自分の指導の誤りに気が付いた。これまでは生徒に無理やり言うことを聞かせようと思っていたが、謹慎期間中にいろいろ勉強をして、処分後は、生徒が自発的に動くように自分が仕向けるようにした。その結果、チームも強くなった」と言った人がいた。
確かにそういう部分では一定の「教育的効果」はあったのかもしれない。
その一方で、謹慎処分を受けても「派手にやりすぎた」と苦笑いをするだけで、一向に指導法を改めない指導者も依然としている。学校も厳しく処分せず「うまくやってくださいよ」となることもある。
世界のスポーツ界では、どんな状況であれ暴力を振るえば「一発アウト」が常識になりつつある。
大事なのは指導者の「処罰」よりも「再教育」だろう。「禁止と言われたからやらない」ではなく「暴力を伴う指導は、もはやスポーツではない」という認識を個々の指導者が本当に持つために、日本高野連などスポーツ団体は抜本的な対策を立てるべきだ。