「犬は主人に対して忠誠心を持つ」は幻想

昔から犬は主人思いの動物とされて、「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」などと言われてきました。

しかし、ここにも人間の勝手な思い込みが入っている気がします。

ただ飼えばいいわけではなく、飼い主が本能的欲求を満たしてくれる(十分な食事、安心な寝床、一緒に遊んでスキンシップをしてくれるなど)ことがなければ恩は感じてくれません。

「動物なのだから、食べ物をあげていれば懐いて恩を感じるだろう」と思うかもしれませんが、それだけなら、よそでもっとたくさんごはんをくれる人を見つければ、そっちへ行ってしまいます。

同様に「犬は主人に対して忠誠心を持つ」というのも、ほとんどの場合、人間の思い込みです。これも親和性の高い飼い方をしない限り、ただの幻想と言っていいでしょう。

幸せホルモン(オキシトシン)に満たされるような、安心と幸せを感じる関係にあれば、親愛の情や絆を感じさせる行為がみられることはあります。

実際、「飼い主に危険が及ぶのを察知して知らせてくれた」とか、「か弱い子どもを懸命に守ろうとした」といった感動的なエピソードには事欠きません。

鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)
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それを忠誠心と呼ぶのは自由ですが、犬は犬社会でも、仲間に危険を警告したり、犬同士で助け合う行動は普通にみられます。それを飼い主に対しても行っているだけだ、というドライな見方もできるのです。

群れで生活する動物には、危機にひんしている仲間を助けようという行為は珍しくありません。社会性のある動物は、群れを維持していかないと自分の生存も危ぶまれるからです。

たとえばゾウの集団では、子ゾウを協力して助けたり守ったりしますが、それは群れ・集団の維持のために仲間を守る行為なのです。

そうした行動は、ときに自己犠牲をともなう“利他的”な、見返りを求めない無償の行為に見えることもあります。しかしそこには「自分の生存にも関わる」という動物の本能がはたらいているはずなのです。

忠犬ハチ公の真実

犬は人間が好きですが、“欲求の期待に応えてくれる存在”が好きなので、人に飼われても、不満やストレスばかり抱えるようだと何年飼っても恩義や忠誠心のようなものは抱きません。

ちなみに、有名な「忠犬ハチ公」の話がありますが、ハチは飼い主だった大学の先生を、亡くなった後もずっと駅で待ち続けていたわけではなく、好物の焼き鳥をくれる人を待っていたのが真実だそうです(諸説あり)。ハチの剝製は東京の国立科学博物館に現存していますが、解剖した際にハチの胃袋からは焼き鳥の串がいくつも出てきたそうです。

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