世論・支持率には敏感な「ワイドショー政権」

政府はどのような支援を考えているのか。

現在、電気料金の負担を緩和する支援制度などを盛り込んだ「総合経済対策」がようやく固まり、事業規模で72兆円、財政支出ベースで39兆円と金額だけをみれば相応の金額が提示された。GDPを4.6%押し上げる効果が期待されるという。

しかし、昨年も55兆7000億円の補正予算を組み、GDPを5.6%程度押し上げるとしたが、実際はそうなっていないことを見れば明らかなように、今回ももくろみ通りにはいかないだろう。

消費者物価指数を1.2%以上引き下げる効果があると試算される物価高騰対策には期待が高まるが、予算の中に組み込まれている「新しい資本主義」を実現するために「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX」の4分野における大胆な投資などは、実際に何にいくら投資されるかも分かっておらず、またこれらは直接家計を支援するものでもない。

しかも、最もシンプルかつ、効果も大きいと考えられる「消費減税」は、検討もされていないのが現状である。

そろそろ国民は怒りをあらわにすべき時に来ているとも思うが、国民はまだ政府の手のひらの上で転がされ、本当の問題から目をそらされている。

岸田政権は「ワイドショー政権」(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Grafissimo
岸田政権は「ワイドショー政権」(※写真はイメージです)

なぜか。冒頭で述べたように、連日「値上げ」のニュースが報道されているが、その原因は「円安」とされている。そして、その円安は日本銀行の金融緩和のせいだとされている。

このような論理構成で報道が繰り返されていれば、「日本銀行の金融政策が元凶」だと誤解する国民がいても不思議ではない。

実際、毎日新聞による10月の世論調査では、「日銀の金融緩和政策について、どう思いますか」との問いに、「見直すべきだ」という回答が55%と過半数を超えている。

そもそも、世論を意識して金融政策を変更すること自体あってはならないと考えるが、岸田政権という世論・支持率に敏感な「ワイドショー政権」においては、そうした「あってはならないこと」が平然と断行される可能性が高い。

幸い、黒田総裁は金融緩和の維持を粘り強く主張しているが、その任期は来年4月8日まで。後任人事次第では、スタグフレーション下にもかかわらず、金融緩和を解除し利上げするというシナリオも十分考えられる。