「ゼロかイチか」では本質を見失う

わたしは、人間は「あいまいさ」がなくなると、精神的に「自立」できなくなると考えています。どういうことかというと、「あいまいさ」がなくなって「ゼロかイチか」で考えてしまうと、人と無駄な競争ばかりしてしまい、ものごとの本質が見えなくなってしまうのです。

たとえていうと、生きていくために手当たり次第に獲物を獲ってばかりいて、獲物の上手な「獲り方」に意識が向かないイメージでしょうか。本来人間は、獲物をみんなで分け合ったり、そのために自分の意見を言葉でていねいに伝えたり、あるいは自分が本当に好きな獲物だけを探し出したりすることができます。

でも、そうした「獲り方」のスキルが身に付かなければ、どうにかこうにか食べて生きていくことはできても、日々不満やストレスが溜まり心のバランスも乱れて、自分の足でしっかりと立つことが難しくなってしまいます。

「あいまいさ」を身に付けるための3つのコツ

そんな「あいまいさ」を見失った35年のつらかった経験から、見えてきたことがあります。それは、そのつらい状態を逆からとらえると、そのまま「あいまいさ」を身に付けるコツになるということです。

先のわたしのエピソードから、3つのコツとして取り出しましょう。

「あいまいさ」を身に付けるためのコツ
1 大局的に見ること
2 多面的に見ること 
3 本質を見ること 

まず1は、「森を見てから木を見る」視点を身に付けることです。目の前の出来事や問題に一喜一憂するのではなく、まるで宇宙から地球を眺めたり、空から地表を眺めたりするようなイメージで、視野を広くして状況をとらえるトレーニングをしてください。

すると、それまで見えていなかった森のなかにあるものに気づけ、いま自分が置かれている状況に対処するヒントを得やすくなります。また、それによって心にゆとりが生まれ、心理的な安全性がつくられていきます。

2は、ひとつの見方にとらわれたり、こだわったりするのではなく、「ものの見方を変える」ことです。他人の立場を想像するなどいったん視点を切り替えてみると、ものごとにはいろいろな側面があることが見えてきます。

それこそ、コップ半分の水をどう見るかによって、ものごとのあり方はまったく違う姿を現すでしょう。ものの見方を変えることで心が前向きになり、すべての事象に自由な発想やユニークな観点からアプローチすることができます。