なぜ「食事はまずは野菜から食べる」が良いのか

「まずは野菜から食べましょう」と、よく言われますよね。これは、「食物繊維を先にとりましょう」ということです。

「食べる順番を変えただけで本当に効果が出るの?」と思うかもしれませんが、ちゃんとエビデンスがあります。

ある研究では、食物繊維とたんぱく質が多く含まれた栄養バーを食事の前に食べたときと食後に食べたときで、血糖値の上がり方はどう変わるかという実験が行われました。糖尿病患者さんと健康な人でそれぞれ実験を行ったところ、どちらも食物繊維とたんぱく質のバーを先に食べたときのほうが、食後の血糖値の上昇はゆるやかになったのです。

健常者のグラフのほうは、もともとそんなに血糖値が上がっていないので、差はあまりないように見えるかもしれませんが、統計学的には「有意に差がある」という結果が出ています。食物繊維には(この実験ではたんぱく質も一緒に摂っていますが)、糖質の吸収を抑えるクッションのような効果があるということです。

私も、食事の順番は「必ず野菜から」を習慣にしています。そして、サラダはできる限り必須にして、量もかなり食べます。まずはたっぷりのサラダを食べて、おかず、そして少量の炭水化物(ごはんやパン)という順番で食べるようにしています。

サラダを食べる若い女性
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

野菜は1日3カップほど食べても問題ない

ところで、「野菜はたくさん食べましょう」とよく言われますが、「その『たくさん』ってどのぐらいなの?」と思いますよね。

浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)
浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)

これにも、ちゃんとエビデンスに基づく答えがあります。

先ほど、フルーツの適量について紹介しましたが、同じ研究で、野菜の摂取量と死亡率についても、複数の研究結果を取りまとめた結果が出ています。これを見ると、全体の死亡率も、心血管疾患、呼吸器疾患、神経変性疾患による死亡率も、食べる量が増えるほど低下する傾向にあります(がんだけは、横ばい)。

そして、どのぐらいまで食べれば食べるほどリスクを低下する効果があるのかと言うと、呼吸器疾患や神経変性疾患あたりは、1日4、5サービングまで、食べれば食べるほどリスクが下がっています。

心血管疾患だけは4、5サービングになると少しリスクが増えていますが、これは、カリウムの問題かもしれません。カリウムは高血圧予防に大事な栄養素ですが、すでにお伝えしたとおり、腎機能が弱っている人は摂りすぎると問題が生じます。

野菜(とくに生野菜)はカリウムが豊富なので、そのために心血管疾患では1日4サービングあたりを超えるとリスクが増えているのだと思います。

腎機能に問題のない方の場合、具体的にどのぐらいの量の野菜を食べるとベストかと言えば、心血管疾患のグラフを見たところ3サービングです。

1サービングの野菜の目安は、次のとおり。

・葉野菜のサラダ 1カップ(75g)
・生野菜(野菜スティックなど) 1カップ(75g)
・冷凍野菜 2分の1カップ(75g)
・加熱野菜 2分の1カップ(75g)
・豆サラダ 2分の1カップ(75 g)

1日3サービングはこの3倍ですから、葉野菜、生野菜だと3カップです。かなり意識しなければ摂れませんよね。ですから、毎食、サラダはお腹いっぱいになるぐらい食べてもいいということです。

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