※本稿は、浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「適量の酒は体にいい」は本当か
お酒との付き合い方について触れたいと思います。
「お酒は適量に飲む分には体にいい」という話を聞いたことがあるかもしれません。その根拠となっているのが図表1です。横軸がアルコールの量、縦軸が死亡の相対リスクを表していて、まったくお酒を飲まない人の死亡リスクを「1」としたときに、1日あたりのアルコール量が増えるにつれて死亡リスクはどう変わるかを示しています。
点線が男性、実線が女性で、それぞれ3つずつ線がありますが、真ん中の線を見てください。他の2つは、「95%信頼区間」と言って、厳密ではありませんが理解しやすいように簡単に言うと「100人中95人はこの中に入りますよ」という意味です。この幅が狭いほど、ばらつきが少なく、信頼性が高いことを意味します。
男女を比べると、男性のグラフのほうが95%信頼区間の幅が狭いですよね。それは、男性のほうがデータの母数が多い分、信頼できるデータが蓄積されているということだと考えられます。さて、1日あたりのアルコール量と死亡リスクの関係はというと、男女ともに、少量であればむしろリスクは減って、量が増えるにつれてリスクが上がっていくという「Jカーブ」を描いています。
飲酒量の増加に伴って死亡リスクが増えるのは、心血管疾患や口腔がん、咽頭がん、食道がん、肝臓がんなどのがんのリスクが増えることが理由です。
女性は1日2ドリンク、男性は4ドリンクまでなら死亡リスクは低い
では、どのくらいまでであればリスクが減少するのかというと、女性の場合は1日2ドリンク、男性の場合は1日3、4ドリンクあたりまでは、「飲まない人」よりもむしろ死亡リスクは低いのです。
ここで、「『1ドリンク』『2ドリンク』ってなんだ?」と思いますよね。
これはお酒の単位で、1ドリンクはアルコール量にして約10g。ビールの場合、中瓶やロング缶(500mL)の半分、ワインは1杯弱、チューハイ(7%)は350mL缶の半分が「1ドリンク」に当たります。
ということは、男性の場合は、1日にビールのロング缶2本程度であれば、ぎりぎり許容範囲内か――。そう、期待してしまう人がいるかもしれません。