酒によるリスク低減効果がまったくない研究結果もある

ここで、もう一つ、別のグラフを紹介しましょう。先ほどのグラフよりも新しい研究結果で、『Lancetランセット』という非常に権威のある医学雑誌に2018年に掲載されたものです。先ほど「ロング缶2本ぐらいはギリギリ大丈夫か」と期待してしまった人には、この結果は残念なお知らせになります。

図表2を見ていただくとわかるとおり、Jカーブが見られないのです。少量のお酒による死亡リスク低減効果は見られず、1日あたりの酒量が増えるにつれて、リスクは右肩上がりに上がっています。

この研究も、先ほど紹介した研究(グラフ)も、「メタアナリシス」といって複数の研究を取りまとめたもので、最もエビデンスレベルの高い研究結果です。より新しいものを含む592個もの研究結果を集めたのが、この2018年の『Lancet』の研究で、なおかつ、統計学的にもより精密な手法を用いてバイアスを取り除く試みがなされ、感染症や外傷を含めた23種の健康障害(疾病)とアルコール摂取量の関係を調べています。

この研究でも、虚血性心疾患では少量のアルコール摂取量ではリスクの減少が確認されましたが、その他の疾患では確認されませんでした。心血管疾患だけではなく、がんやケガ、結核等の感染症などを加味して総合的に評価すると、アルコールは少量からリスクを上げている(飲まないことが一番リスクが少ないこと)という結果の研究です。“少量のお酒の健康効果”が否定されてしまったわけです。

「休肝日を設けつつ2ドリンク」なら許容

とはいえ、少量のお酒に健康効果はあるのかどうか、結論が出たわけではなく、「ある」とも「ない」とも現時点ではまだ言えません。

また、お酒に対する反応は人それぞれ違うので、こういう研究結果が出ていることを知った上で、選ぶことが大事です。

私個人の見解としては、休肝日を設けつつ1日2ドリンクぐらいまでは良いだろうと考えています。

2ドリンクの目安は次のとおりです。

●ビール・発泡酒(5%) 中瓶・ロング缶1本(500mL)
●チューハイ(7%) 350mL缶1本
●日本酒(15%) 1合
●ワイン(12%) グラス2杯(200mL)
●焼酎(25%) 100mL
●ウイスキー(40%) ダブル水割り1杯(原酒で60mL)

少量のお酒の健康効果についての結論は出ていませんが、少なくとも飲みすぎが体に良くないことは確かですから、お酒との付き合いは量を選びましょう。