供給する人がいるから需要が生まれる

現在は盗撮行為の再発防止へ「わらにもすがる思いだった」と「自助グループ」に参加して悩みを共有し、回復を目指している。「自分を振り返ると、性に対するタブー意識がものすごかった。小学生ぐらいまで下ネタも一切駄目。エッチな話なんてお酒の席でもあり得ない」という人生だった。

共同通信運動部編『アスリート盗撮』(ちくま新書)
共同通信運動部編『アスリート盗撮』(ちくま新書)

「今、まったくそういう衝動が起こらないことはないんです。きれいな制服の着こなし方の女性がいたらドキッとしますし、撮れるかなと思っちゃったりする。ただ今は撮らないという選択ができるようになった」と心境を打ち明けた。アスリートの盗撮問題は、教員時代の20年前から知っていたという。自身はネットに画像をアップした経験もなく、何かを言える立場にないと前置きしながら見解を語った。

「どちらかというと供給する人がいるから需要が生まれる感じがする。日本っていう国、社会にはびこっている価値観。それが大きくて。ビーチバレーの写真でも性的な切り取り方をしている。日本人の女性に対する見方が今回のアスリート問題。厳罰化すればなくなるなんて、そんな単純なものでない。被害は減らない」

盗撮動画や画像の売買がネットで横行していることも把握していた。「お金になるかなと思った時期もあったけど、自分の中ではハードルが高かった」と足がつくリスクも考えて踏み込まなかったという。

逮捕されるケースは氷山の一角

盗撮被害をなくすためにはどうしたらいいのか――。「法整備の厳罰化は抑止力になるか」と聞くと、少し考えて「たぶん死刑になっても、やる人はいます」と断言した。その上で問題を根っこから絶つには、元教員らしく「相手のことを思いやる丁寧な人権教育と治療しかない」と強調した。

「これ以上の加害者を増やさないこと。私1人捕まえて盗撮しないとなれば、仮に撮られたのが1人1枚だったとすれば、2、3000人の被害が減る。男性の意識が変わっていかないと。社会全体の構造を変えていかないといけない」と指摘した。

15年の犯罪白書によると、盗撮には常習性が伴う一方、初犯では実刑に至らないケースも多く、再犯率は36.4パーセント。実に3人に1人が再び犯行に及んでいる。平均年齢は37.4歳。婚姻状況が未婚の者の割合が約6割、教育程度では大学進学の割合が約4割と高いデータが示されていた。

確かに盗撮の常習犯でニュースになるのは医師や公務員、警察官や大学教授といった社会的地位の高い人も多い。盗撮事例に詳しい弁護士によると、非接触型の盗撮で逮捕されるケースはそれでも氷山の一角。動機として最も分かりやすいのが他人の下着や身体が見たいという性的な衝動だ。

職場や家庭でのストレスが要因のことも多い。次に女性に対する優越感やスリルを味わうことに目的が転化する場合があるという。さらに深刻化した場合、盗撮が病的に常習化してしまう傾向がある。

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