警察庁の統計によると、2021年の盗撮事犯の検挙件数は5019件で過去最多を更新した。共同通信の田村崇仁記者は「日本は『盗撮大国』とも呼ばれており、学校や職場などで深刻な問題になっている。再犯率は4割に迫り、逮捕されるケースは氷山の一角だ」という――。(第2回)

※本稿は、共同通信運動部編『アスリート盗撮』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

電車の中でスマホを見ている男性
写真=iStock.com/Sorapop
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検挙件数が過去最多を更新している「盗撮大国」

「盗撮大国」とも呼ばれる日本ではアスリートの性的画像被害だけでなく、駅やショッピングモールなど商業施設で盗撮のニュースが連日のように世間を騒がせ、学校、職場、航空機内でも深刻な問題になっている。

警察庁の統計によると、盗撮事犯の検挙件数は2010年の1741件から21年は3倍近い5019件で過去最多を更新。そのうち約8割に当たる3950件がスマートフォンによるものだ。ごく普通の会社員ばかりでなく、警察官や教職員が逮捕されるケースも少なくない。いくら被害の対策を強化しても、加害者が減らなければ問題解決に近づかない実情がある。

日常的なスポーツニュースの業務と並行してアスリート盗撮の記事を編集するデスク作業に追われながら、ずっと心に引っかかっていたことがあった。勇気を出して声を上げた女性アスリートがいる一方で、盗撮する加害者の実態にも目を向けなければ、問題の本質には立体的に迫れないのではないか。再犯率は4割に迫るという盗撮の動機はどこにあるのかと――。