子供を立ち直らせるには「とにかく放っておく」ことが必要

子供が成人した後の親子関係は、「スープが冷めない距離」が理想的といわれます。しかし、私は、昨今の日本では、その距離だと、子供が成人した以降の親子関係としては近すぎると思います。

和田秀樹『70歳の正解』(幻冬舎新書)
和田秀樹『70歳の正解』(幻冬舎新書)

80歳以上になって、本格的な老いを迎えてからならともかく、心身ともに元気な70代までの間は、子供とはもっと距離をとったほうがいいでしょう。これは、自分が若い頃のことを思い出してみると、よくわかるはず。自分が20代、30代の頃、親の顔など年に何度浮かんだものか。子供とは、「1年に一度くらい、顔を見せてくれたらいい」くらいに思い、つかず離れず、暮らすことです。それは、子供の自立心を育てるためでもあります。

私は、ときおり、子供(といっても成人、ときには中年)の引きこもりや家庭内暴力に関する相談を受けてきました。そんなとき、親御さんには「事態は、かまえばかまうほど、悪くなります。子供は、かまえばかまうほど、ダメになるものと、肝に銘じてください」という意味のことをいってきました。子供を立ち直らせるには、「とにかく放っておく」ことが必要なのです。

長年、引きこもっていても、親が食事をいっさいつくらなければ、コンビニくらいには行くようになるものです。しかし、私が「かまうな、放っておけ」と口を酸っぱくしていっても、たいていの親は、最初のうちは「先生、そうはいっても」と顔を曇らせます。

ただ、私が半年も同じことを言い続けるうち、しだいに親が態度を変えはじめ、自分の生活の充実のほうに気が向くようになると、子供の態度にも変容が現れるのです。

子供に「結婚する相手がいる」というだけで幸福だと思ったほうがいい

子供の「就職」や「結婚」に関しても、私は、基本的には「放っておく」ことが肝要だと思います。まず、就職に関してですが、私たち親の世代が会社に入った頃は、まだまだ年功序列と終身雇用が当たり前の時代でした。ところが、今は55%の人が生涯、係長以下、3分の1の人は生涯、平社員で終わる時代です。

今の若者にとって、サラリーマンとして勤めあげるのは、私たち親の時代よりも、はるかに大変な道なのです。大企業に入っても、今の時代、安定した生活を送れるかどうか、まして幸せになれるかどうかは、まったくわかりません。そんな時代、子供が、サラリーマン以外の仕事につくと言いだしても、頭から否定しないことです。

「結婚」に関しても同様で、親の目から見て「とんでもない相手!」と思えても、私は頭から反対しないほうがいいと思います。今や、男性の4人にひとりは、生涯未婚という時代。バツイチが恥ずかしい時代でもありません。「結婚する相手がいる」というのなら、それだけでも幸いと考えたほうがいいと思います。

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