日本の「複合機」技術が狙われている

中国の脅威は、サイバー攻撃だけではない。

習近平直轄の全国情報安全標準化技術委員会(TC260)が4月に公表した「情報セキュリティー技術オフィス設備安全規範(草案 2022年4月16日)」では、オフィス設備の安全評価について「国内で設計・生産が完成されていることを証明できるかどうかを検査する」と規定。この条件を満たすために、現地での設計・開発を行えば、技術が中国に漏洩しかねない。

日本のお家芸ともいえる、複合機の技術を中国が盗用しようとしているのは明らかだ。

コピー機能やスキャン機能、印刷機能、ファクス機能など複数の機能を統合した複合機は、日本のお家芸であり、先端技術の塊といってもいいものである。

コピー機能やスキャン機能の実現には光学の知見が、印刷機能の実現には化学の知見が、ファックス機能の実現には通信の知見が、そして歯車などの紙送り機能には機械工学、電気工学、電子工学、情報工学を融合させたメカトロニクスの技術が求められる。

そして、それら機能をまとめあげ、一つの製品に仕立てるためにはITの技術が必須であり、軍事転用可能な技術もそこには含まれている。

「何か起きてから気づく」では遅い

中国の「魔の手」は人材の獲得にも及んでいる。

特にファーウェイは、近年、日本の研究者や技術者の獲得に熱心だ。

ファーウェイは自動車分野に力を入れており、特に電動化の要となる車載パワー半導体に関する日本人技術者を大量に集めている。

日本の大手自動車メーカーでパワー半導体の研究開発を主導してきたベテラン技術者が、高額の報酬で引き抜かれているのだ。

パワー半導体は、半導体市場を失った日本が唯一、起死回生を図れる市場であるが、ハイブリッド車でつちかった自動車の電動化技術が、やすやすと中国に持っていかれるのを政府は、ただ座視しているだけだ。

「物」「国家標準」「人」など、あらゆる面で戦略的に日本を攻略してくる中国に対して、早期に手を打つ必要がある。

今回のサイバー攻撃はストレステストだとし、警戒を強める台湾。その時が来て、はじめて気づく日本。

日本人にももっと危機感を持って、経済安全保障の重要性を理解してほしいものだ。

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