ミーティングの様子。店長の具志孝幸(写真右)によるスタッフへの指示は「やって」ではなく「いっしょにやろう」。スタッフ目線に立つのは、具志自身のスタッフ経験がもとになっている。

ミーティングの様子。店長の具志孝幸(写真右)によるスタッフへの指示は「やって」ではなく「いっしょにやろう」。スタッフ目線に立つのは、具志自身のスタッフ経験がもとになっている。

かくて那覇新都心店は、2回目のTSCでグランプリを取るべく、全社員、全スタッフが燃え上がることになる。新しい改善提案が、社員からもスタッフからも次々に出てくるようになった。

商品を紹介するポップの質を向上するために、「コメント大会」を開催した。レンタル、レコード、書籍というセクションの壁を取り払い、「イラストが目を引いたで賞」「コメントが気になったで賞」などさまざまな賞を設けて、スタッフ全員参加でポップを作成。スタッフルームに貼り出して、全員で評価し合った。

スタッフルームには、「イノベーションボード」を設置した。スタッフが気づいたことや客からの苦情などを付箋に書き込んでボードに貼る。それを社員が読み、改善案を付箋に書いてスタッフの付箋に並べて貼るという仕組みだ。一例を紹介すると……。スタッフ「トイレに鍵などをかけられるフックを付けられないでしょうか?」社員「鞄をかけられるフックでいいんでしょうか。設置できるか検討してみます」

イノベーションボードの登場によって、毎月約20件の改善提案が行われ、次々と問題が解決されていった。

商品陳列の方法にも工夫が凝らされるようになった。そもそも那覇新都心店はコーナー組み(あるテーマに沿って商品を集めたコーナー)が多い店舗だったが、スタッフの提案で新しいコーナーが次々と誕生した。

たとえば、2008年8月に発売された『キッズ・ボッサ・ピークアブー』というCDがある。調理やドライブのBGMに適した、軽快なテンポの曲を集めたアルバムだが、CD売り場では全く売れなかった。

あるスタッフが、料理本のコーナーでこのCDを流してはどうかと提案した。CDを流しつつ、料理作りに最適のBGMだとポップで宣伝するわけだ。

このアイデアを店長が採用して売り場で展開してみると、11月にはわずか2枚だった売り上げが、1月には46枚に急増。TSUTAYA全店で第3位という成績を収めることになった。

接客面でも大きな改善が行われた。TSUTAYAには「スマイルスター」という認定制度がある。各地域で開催される接客コンテストに参加し、一定基準に達していると認められると、スマイルスターのワッペンを胸に貼ることができる。

那覇新都心店にはこれまでスマイルスター認定者が1人もいなかったが、QSCのレベルを上げようと11名がコンテストにエントリー。そのうち3名がスマイルスターに認定された。

接客スキル向上のための取り組みが、なんとも涙ぐましい。スタッフ全員の接客態度をビデオ撮影し、それを見ながら改善すべきポイントを一人一人確認していった。美しいお辞儀をするために、スタッフルームの鏡に最適なお辞儀の角度を示すテープを貼り、そのテープと一致する角度でのお辞儀を何度も練習した。

(垂見健吾=撮影)