生き残った人々の生活も悲惨だ。村人たちは家を失い、蓄えてあった米や作物もダメになった。ある住民はエーヤワディー紙に対し、「ここにいる多くの人たちは、持っていたものをすべて失いました。靴さえもです」と語る。

孤立する両国の急接近

自国民の虐殺と迫害を重ねる軍事政権は、時が経つほどにますます民主化への妥協を認められない泥沼にはまっている。兵士が市民の命を奪えば奪うほどに、国民民主連盟が再び与党に返り咲いた際、軍部の責任を追求されるおそれが高まるからだ。

とはいえ、このまま圧政を敷き続けたとしても自らの手で国土を焼き、市民不服従運動によって経済が低迷するという冴えない状況が続くのみだ。今後の頼みの綱は、軍事面以外も含めたロシアとの広範な連携となるだろう。

米政治外交専門サイトの「ディプロマット」は、ウクライナ侵攻後のロシア孤立により、ミャンマーとロシアは「互いに強く抱擁する」関係になったと指摘している。

また、エーヤワディー紙は両国が外交・経済・貿易の分野で関係を強化すると報じている。核情報サイトの英ワールド・ニュークリア・ニュースは、原子力エネルギー開発でも協力を深めていると指摘する。

巨悪を封じなければ虐殺は終わらない

国際的批判の集中しているロシアから兵器を購入し、その兵器で国民の住む村を狙い撃ちにするという行動は常識を逸脱するものだ。

レジスタンスを含めた国民の不満は募っており、反軍部の団結を日増しに強固にしている。事実、航空戦力を除けば、地上戦では国軍はレジスタンスの制圧に手を焼いているとの報道が目立つ。

ロシア機を多用した得意の戦術で村々を恐怖に陥れている国軍だが、頼りのロシアは国際的に危うい立場に追いやられつつある。ミャンマー国軍は中国よりもロシアの戦闘機を好んで導入してきた経緯があることから、ロシアの生産能力に問題が生じれば、国軍は重大な後ろ盾を失うことになる。民主主義政治が再び息吹を吹き返すには、背後にある巨悪を封じ込める必要がある。

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