コロナ対策の緊急緩和策を急速に逆転
3.量的引き締め(QT)
新型コロナウイルス禍の下で米経済を支えるため、FRBは米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などを買い入れることによる金融緩和策、量的緩和(QE)を行ってきました。2022年時点で、FRSの総資産量を示すバランスシートの規模は、通常時の2倍に膨れ上がっています。バランスシートの拡大によってインフレが進んだともいえ、このバランスシートを縮小するのが量的引き締め(QT)です。
その規模とスケジュールは下記のようになっています。
・2022年6月1日以降,FRBは1カ月当たり最大475億ドルの国債とMBSを償還。
・2022年9月までにはその規模を1カ月当たり950億ドルに拡大する。
FRBは2017年から2019年において、1カ月当たり最大500億ドルのQTを実施しましたが、今年9月以降はその2倍のペースで引き締めが行われるということになります。
これによって、QT開始からの1年間でFRSのバランスシートを約1兆ドル(11%)削減することをFRBは予定しています。現在のQTペースを2024年末まで維持すれば、バランスシートは現在の国内総生産(GDP)比37%から約20%にまで縮小されます。
その影響はインフレ率に対して25~125ベーシスポイント(0.25~1.25%)に及ぶと推定されています。
リセッション入りすればS&P500は3300ドル台に下落も
4.リセッション確率
FRBの強力なインフレ封じのあと、リセッション(景気後退)は訪れるのでしょうか。その確率についてはあらゆるアナリストの予想が飛び交っており、平均的にみると40%ぐらいと想定されています。
キーポイントになるのは、アナリストの予想するS&P500銘柄の売上高純利益率(net margin)がまだ非常に高いということでしょうか(“US Profit Margin Estimates Are Too Optimistic, Goldman Strategists Say” By Sagarika Jaisinghani, 28 June 2022, Bloomberg.)。この楽観的予想が否定されてしまうような状況が起きれば、本格的なリセッション入りが意識されると考えています。
もしリセッション入りした場合、現在3800ドル前後で推移しているS&P500指数は、テクニカル的にみて3300ドル程度まで下値を目指す可能性もあり得ると考えています。